ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

COVER STORY: Topics and Productsトピックスきっかけは、創業メンバーとして加わったO氏が人脈づくりのために参加した異業種交流会の懇親会。隣に座った主婦に「何してる人?」と尋ねられ、「GEL(ジェル)を開発している会社で働いている。」と答えた。すると、「あ~、ジェルって保冷剤のこと?」というリアクション。聞けば、幼稚園に通うお子さんのために、夏場は毎日保冷剤を弁当に付けているという。その理由が、そうしないと「フルーツが缶詰みたいに茹って不味くなってしまうし、サラダは漬け物みたいに煮立ってしまう。それだけじゃなく、食中毒が怖いでしょ?」とのこと。そして、フタが保冷剤になっているお弁当箱があったら便利なのに、と一言。O氏はなるほどと思い、その言葉が記憶に残ったらしい。ちょうど、日銭を稼ぐ自社商品の必要性を痛感していた私が、その話を耳にしたのが翌朝の2人だけの経営会議の席。「どんなに簡単なものでも良いから、当社の名刺代わりになって、多少でも売れる商品を作ろう!」と議題を挙げると、「そういえば、こんな話があるんだけど」と、彼が記憶をたどるように語った話が、その朝の議題の解決策。「よし!やろう!」と、当時はまだ2人きりだったので、行動は早かった。その日の私は、午前中に試作し、午後には簡単な試験や試作品の写真撮影を行い、そして模擬パンフレットを作って知人に「これ売れると思う?」とメール配信。すると、間もなく「良いと思う。」という返信が続々と戻ってきた。市場調査の結果も悪くない感触。そして、夕方には例の主婦を呼び「欲しかったのはコレでは?」と試作品を披露すると、「あ~っ、そうそう、コレだ!」と眼を輝かせながら弾んだ声で「デザインが良ければ1,000円でも買う。」という返事。これは売れる!と2人が確信するまでには、たった半日しかかからなかった。図2 GEL-COOLスタンダードシリーズ(全26種)コンセプトは至ってシンプル『フタが保冷剤のお弁当』。保冷剤として『GEL』を使い、当社の想いを隅々まで行き届かせたデザインの商品。世界に「冷たくて美味しいランチ」を楽しむライフスタイルを提案しよう、というテーマで掲げたプロジェクトネーム『GEL-COOL』が、結果的にそのまま商品名となった。デビュー時のキャッチコピーは『愛あればこそ冷たい!』。愛情は『温かい』ばかりではダメなのだ、と世間に訴えかけた。そして、1サイズ8色展開の製品が完成した。当然ながら、製品化までにはさまざまな課題があったものの、若さと勢いでそれらをクリアし1年ほどで発売にこぎつけた。自分たちでできないところは外部と提携し、初めて金融機関から融資を受け、本当に多くの方々の助力をいただいて、この小さな商品は誕生した。たくさんの方の応援があったおかげで、発売開始前に約2万個の受注をとることができ、出だしは順調。その後は、幾度もの大ピンチを経験したが、本当にたくさんの方々に支えられて、当初の予想を超える数の商品を世に送り出すことができている。図3 GEL-COOまシリーズ(全5種)とくに、飛躍のきっかけとなった商品がホッキョクグマの顔をデザインした『GEL-COOま』。札幌市円山動物園が経営危機に陥っていた2007年、動物園を応援するために作った商品だ。円山動物園は、レッドデータブックで絶滅危惧種に指定されたホッキョクグマの自然繁殖で世界的な成果を上げている。その成果をたたえる商品として誕生、1個2個ではなく1頭2頭と数え、♂と♀がいて、売上の一部をホッキョクグマの餌代として寄付している。今ではこの商品が一番良く売れており、逆に、当社はホッキョクグマから恩返しを受けているように感じるところがある。ただ、今の悩みは、このお弁当箱のヒットのおかげで、新規GELの実用化を目指して設立したはずの大学発ベンチャーは、いつしか、お弁当箱メーカーとして有名になっていたこと。本来目指すべきゴールへの道のりは、まだまだ遠く感じる。会社は10周年、次の10年へまた一歩。文1)“組織間コラボレーション-協働が社会的価値を生み出す-”,佐々木利廣他共著,ナカニシヤ出版,日本(2009)147-174献728 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻12月号(2013年)