ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

COVER STORY: Topics and Productsトピックス図2高分子量PGAの工業的製造方法進行させることにより、高分子量PGAが高反応率で生成することを見いだした。以上の技術を組み合わせることにより、図2に示すグリコール酸からPGAを大量製造できる製造技術を確立した。さらに、PGAを実用化するうえで必要な溶融成形加工性向上のための熱安定剤添加や、実使用に耐えるための加水分解性制御技術を導入し、さまざまな用途への適用が可能な高品位のPGAの製造技術を確立した。(株)クレハでは、2002年からいわき事業所で年産100トン能力のパイロットプラントでの実証実験を経て、その後、米国ウェストバージニア州に年産4000トン能力の商業プラントを建設し2011年に稼動を開始した。3.PGAのシェールガス掘削用途への応用PGAは前述したとおり、生分解性と高強度という特性を兼ね備えたポリマーであり、その特性を活かした用途開発が進んでいる。シェールガス採掘のためにはおもに水平坑井採掘と水圧破砕の技術を用いるが、PGAは水圧破砕時に坑井内で使用する部材としておもに用いられている。部材の一部には、100度以上の高温下で高水圧に耐えられる強度が要求されており、従来から金属やエンジニアリングプラスチックが用いられているが、水圧破砕後のガス回収工程では生産障害となる場合があるので、坑井からの部材の回収や破壊が必要となる。これら部材を高強度と生分解性を兼ね備えたPGAに代替すると、PGA使用時には高強度をもつ部材として使用され、使用後には加水分解により分解・消失することとなる。このことによって、坑井からの部材回収工程の削減と採掘工期の短縮によるコストダウンに寄与できるとともに、PGAは最終的に二酸化炭素と水に分解するため環境負荷を低減するとして期待が大きい。また、坑井掘削時には、掘削用水系流体を流しながら掘削していくが、地層中の空洞や割れ目などの大きい空隙から流体が地層中に流入してしまう逸泥現象が起きると、掘削効率の低下を招く場合があり、地層中のこの空隙を目止めする必要がある。目止めする材料としては従来から無機粒子が一般的に使用されているが、無機粒子は基本的には非分解性であり、地層中に残留してしまうので、ガス回収効率の低下を引き起こしてしまう。そこでこの目止め材として分解性を有するPGAを使用すると、一時的な目止め機能を発揮した後に消失するので、その後のガス回収効率の低下を起こさない。また、地層環境を汚染させないことからも適用が期待されている。なお、同じ生分解性のポリ乳酸も一時目止め材として採用されているが、ポリ乳酸は通常100度以下の温度では分解速度は遅く、深度の浅い坑井や海洋など低温領域での使用は難しい。一方、PGAは比較的低温でも速やかに重量減少するため、一時目止め材の使用温度領域によって使い分けることが可能である。4.今後の展望優れた分解性能とプラスチック材料中で最高レベルの強度を併せもつPGAについて、従来にはない工業的製造技術を開発し、その特長を活かせる新しい用途開発を展開してきた。シェールガスの市場は成長著しく、今後も成長が見込める有望な分野の一つである。このシェールガスの採掘用途でPGAの採用が始まっているが、シェールガス採掘は、コストダウンや環境汚染低減に供する材料へのシフトが進んでおり、今後、ますますPGAの貢献が期待される。文1)W. H. Carothers, G. L. Dorough, and F. J. Van Natta, J. Am. Chem. Soc.,54, 761(1932)2)C. E. Lowe(DuPont)USP2668162(1954)3)E. E. Schmitt(A.C.C)USP3297033(1967)4)佐藤浩幸,紫垣由城,砂川和彦,市川幸男,山根和行, PolymerPreprints, 61, 34(2012)献730 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻12月号(2013年)