ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

COVER STORY: Topics and Productsトピックスを劣化させることなく使用する技術が確立されている。室内環境では、光触媒特性、耐久性、およびコスト等多方面から、上記の積層コーティングの採用等どのようにコーティングするか適宜判断され使用されている。4.「V-CATR」の応用例図2光触媒加工された繊維表面のSEM観察例ある揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)の低減が課題の場合もあり、その他、消臭、防汚、抗菌、抗ウイルス等生活空間を改善する環境浄化材料として適用検討が進められてきた。基材が高分子材料であるものは、身の回りにたいへん多い。そこで、豊田通商と豊田中央研究所は、可視光応答型光触媒の高分子基材等への応用を進めるべく、光触媒を使いやすい状態、つまり、粒子径制御技術および溶媒への高分散技術等を確立してきた。最初に繊維への応用を進めたが、繊維といっても、天然繊維から合成繊維までさまざまの繊維素材があり、また、担持の仕方が大きく性能に影響する。当然、風合いや色も損ねてはならない。そこで、染色加工メーカの有する担持技術開発と光触媒素材へのフィードバックとを繰り返し、各種繊維への「V-CATR」加工が可能となった。とくに、母材繊維の分解を抑制し、光触媒作用をいかにひきだすかが重要なポイントであった。その結果、消臭、抗菌、抗ウイルス、防汚等の機能付与をすることができた。図2には、担持された繊維の表面状態の例を示す。また、プラスチックフィルムや人工皮革上へ、また塗膜上への光触媒による機能付与も進めた。この場合は、まず無機系の保護層をコーティングした後、光触媒をコーティングするなど、光触媒が直接基材自身をアタックしないようにすることが重要である。これまでにも外装用途では太陽光の強い紫外線強度に対する耐性が必要であり、この2層コートによってはじめて、基材豊田通商、豊田中央研究所では、各社と実用商品への適用検討を進め、光触媒の有する酸化分解による多機能性を各種商品に活用していただいている。繊維関係の、ウール、綿、ポリエステル、不織布、紙はもとより、フィルム、人工皮革、塗装板にも適用されている。これらの「V-CATR」加工された素材をもとに、アパレル、各種ユニフォーム、カーテン、人工観葉樹、ブラインド、マスクに利用されている。そのほか、高分子材料以外では、歯の漂白剤、室内の消臭・抗菌加工、メガネフレーム、セラミックフィルタなど多岐にわたって利用されている。5.おわりに可視光応答型光触媒「V-CATR」材料とその応用について紹介した。今後も、性能を向上させつつ、さまざまな分野において適用検討を進め、可視光環境下での多機能性を活かした商品に利用していただくことを目指し、環境浄化に貢献していきたい。文1)T. Morikawa, R. Asahi, T. Ohwaki, K. Aoki, and Y. Taga, Jpn. J. Appl.Phys., 40, L561(2001)2)R. Asahi, T. Morikawa, T. Ohwaki, K. Aoki, and Y. Taga, Science, 293,269(2001)3)藤嶋昭,橋本和仁,渡部俊也,“光クリーン革命”,シーエムシー(1997)4)橋本和仁,藤嶋昭,“図解光触媒のすべて”,オーム社(2012)5)T. Morikawa, Y. Irokawa, and T. Ohwaki, Appl. Catal., A, 314, 123(2006)6)T. Morikawa, T. Ohwaki, K. Suzuki, S. Moribe, and S. Tero-Kubota,Appl. Catal., B, 83, 56(2008)7)H. Irie, S. Miura, K. Kamiya, and K. Hashimoto, Chem. Phys. Lett.,457, 202(2008)献734 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻12月号(2013年)