ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

トピックスCOVER STORY: Topics and Products特集素敵な高分子のギフト―第2弾―新規環状カルボジイミドの開発庄司信一郎帝人(株)[740-8511]岩国市日の出町2-1研究員.専門は高分子化学,有機合成,バイオテクノロジー.sh.shouji@teijin.co.jpwww.teijin.com/1.はじめにカルボジイミドは、-N=C=N-であらわされる官能基であり、へテロクムレンの一種である。1800年代中盤に初めて合成が確認されて以来1)、その優れた反応性から多くの用途で展開が進んでいる(図1)。また、近年、ポリエステルをはじめとする汎用樹脂や、ポリ乳酸に代表される生分解性樹脂の耐久性付与剤として着目されている。これは、加水分解の促進因となるポリマー酸性基に対する反応選択性と高反応性から、ほかの官能基と比べて高い耐久向上効果が得られるためである。弊社で展開する耐熱性ポリ乳酸「バイオフロントR」においても、エンジニアリングプラスチックを目指す上で、耐久性の克服は大きな課題であった。当初、加水分解耐久性の改善検討は、従来のカルボジイミドを用いて実施した。しかし、耐久性は向上したが、バイオフロントRにカルボジイミドを溶融混練する際や、そのポリマーを再溶融して加工する際に、イソシアネートガスが発生し、作業環境を悪化させるという問題が生じることがわかった。イソシアネートは一般的に刺激性や感作性の高い物質と知られ、化学構造によっては厳しい管理濃度が推奨されている2),3)。その後、カルボジイミドに代わる耐久性付与剤の検討を行ったが十分な性能を示すものはなく、バイオフロントRの開発自体が危ぶまれる状況となった。当社の工程にガス排気対策を施し、カルボジイミドを使用することも考えたが、顧客の加工工程などでガスが発生し、問題を引き起こす可能性があった。そこで、プロジェクトの存亡をかけ、不退転の決意でこの課題に挑戦することを決めた。すなわち、イソシアネートガスが発生しないカルボジイミドの開発である。2.コンセプトまず、なぜイソシアネートが生成し、かつガス化してくるのかを考えることから始めた。カルボジイミドはポリ乳酸のカルボキシル基と反応すると、O-アシルイソウレアを形成し、容易にN-イソウレアに転位する。加熱条件下ではさらに熱分解が進行し、アミドとイソシアネートが生成する(図2)4)。このメカニズムから、二つのアプローチを考えた。A)転位反応を抑制するため、カルボジイミド基近傍に嵩高い置換基を導入する。B)イソシアネートが生成しても、ガス化しないように高分子量の骨格を導入する。しかしながら、両者ともガス抑制には若干の効果を示したものの、肝心の加水分解抑制効果が大きく低下する結果となった。上記のような正攻法では、抜本的解決には至らなかった。苦悩の中、カルボジイミドの専門書を眺めていると、環状構造のカルボジイミドがふと目に留まった5)。そ〈従来のカルボジイミドを使用した場合〉OCOHN-acylureaOR 1 R 2+ N C NC OCarbodiimideOCON C NR 1 R 2O-acylisourea〈環状カルボジイミドを使用した場合(コンセプト)〉OCOH+N C NCyclic carbodiimideO-acylisoureaNCHNR 1R 2OCNHR 1+イソシアネートガス発生= Polymer chain R1, R2 = Arbitrary groupOCNOCHNR 2NCON-acylureaOCNOCNOCNHNCOイソシアネート固定化= Polymer chain図1カルボジイミドの用途図2イソシアネートの発生メカニズムと環状コンセプト高分子62巻12月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan737