ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

MACRO EconomyMACRO経済今後の高分子技術の動向を占います!産業用フィルターリサイクルシステムや黄砂対策製品も登場浅海宏規日刊工業新聞社2007年日刊工業新聞社入社.支局勤務を経て2010年4月から白物家電,印刷,電線業界などを担当.2012年10月から繊維・製紙・ガラス業界を取材.砂ぼこりやたばこの粉塵、花粉や細菌などの生物粒子、微小粒子状物質(PM2.5)など、身の回りの空気の洗浄に今やフィルターは欠かせない存在になっています。一般的にプラスチック産業廃棄物は、化学や熱処理によって8割以上がリサイクルされると言われます。ところが、フィルター業界では、廃棄物の特性や処理コストなどから埋め立てや焼却されることが多く、対策が求められてきました。日本バイリーンでは、オフィスビルや工場などから出る使用済みフィルターをリサイクルするシステムを確立し、普及に力を入れています。回収日のトラック手配や、中間処理業者への連絡など事務処理を代行するために、排出事業者や収集運搬業者、中間処理業者と事務委託契約を結びました。こうした一貫して管理するケースは、珍しいそうです。不織布のろ材にも特徴があり、ろ材の密度は空気の流入側から流出側にかけて高くなっており、圧力損失が低く、高い捕集効率をもたせられるそうです。このため20%ほどの低圧力損失化が可能になるそうです。フィルターの使用環境で厄介なのが、臨海地域にある建物で使用する場合です。海から飛来する海塩粒子をフィルターで捕集しても、海塩が潮解し膜状に広がってしまい、装置の腐食や電気系統のトラブルにつながることもあります。最近では、一度に大量の粉じんをともなって飛来し、フィルターを目詰まりさせる黄砂も問題になっています。東洋紡カンキョーテクノの担当者は、海塩粒子や黄砂対策として「用途にあったろ材を開発することがポイントだ」と指摘します。同社が最近発売した「KSLタイプ」は、黄砂の侵入を防ぐフィルターです。開発には塩害対策フィルターで捕集性能を高めることに成功したノウハウが活きたと言います。フィルターのろ材は、従来のガラス繊維に比べて水に強く、破れにくい構造で、補強板を入れずにすんだため、初期圧損の低減につなげられたそうです。現在、私たちの暮らしの中でフィルターを身近に感じるのは、インフルエンザシーズンに空気清浄機など<KSLシリーズ>でフィルターを使うときではないでしょうか。日刊工業新聞のデータベースで「インフルエンザ」と「フィルター」と入力して過去の記事を調べると、1990年代にはわずか2件の記事しかヒットしません。いずれも花粉症を扱った話で、マスクや吸入器などの話題を取り上げています。ところが、2003年から13年秋までの時点で84件にまで増えています。とくに、新型インフルエンザが流行した2010年前後に目立って記事が多くなっています。空気清浄機需要は、2009年の新型インフルエンザ流行で伸び、12年は約300万台。13年は330万台に達する見込みになるという調査もあります。活発化する民生品用途においても、捕集効果の優れた高性能フィルターの開発競争がポイントの一つになりそうです。KEIZAIワーズ三次元(3D)プリンター(3D Printer)形状データから金属や樹脂の粉体を積層し、部品や製品を作り出します。製造業では1990年代から試作・開発で使われてきました。ここに来て、最終製品に仕上げる部品の製造まで用途が広がり、一気に注目が高まってきました。航空機など多品種少量の特殊部品や人工骨など医療分野への応用が期待されています。価格が勝負の大量生産を避け、高付加価値品の製造で生き残りを目指してきた日系メーカーにとって、3Dプリンターは差別化製品を作る絶好のチャンスと言えます。一方で、装置の高機能化が進みすぎて製造技術の差別化ができなくなり、資本力に勝る韓国メーカーなどの台頭を許してしまった半導体産業のような事態は避けたい所です。750 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻12月号(2013年)