ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

私の本棚からFrom My Bookshelf■若手に是非読んでもらいたい本吉川研一のおすすめ同志社大学生命医科学部教授分野:生命科学書籍名:やわらかな遺伝子著者名:マット・リドレー出版社:紀伊国屋書店出版年:2004年価格:2,400円「生まれ」か?「育ち」か?:Nature or Nurtureこの本の原題、Nature via Nurture(生まれは育ちを通して)、これに著者マット・リドレーの主張が凝縮されています。生物の「遺伝はDNAの分子の塩基配列で決定されている」:このセントラルドグマはここ半世紀余りの生命科学の根幹となっています。ところが、西暦2000年前後になりヒトの遺伝子、すなわちDNAの塩基配列の全容が明らかになるにつれて、遺伝子は生物の形態や機能の設計図であるとすると説明できないような事実や現象が次々と報告されるようになりました。このことを、著者は、行動学、精神医学、発達学、そして人類の文化にいたるまで多様な例を取り上げ、遺伝子と関連させて議論しています。そしてその結論は明快で、“Nature or Nurture”ではなく、“Nature via Nurture”というわけです。「高分子なくして生命なし」半世紀余り前、遺伝を司る分子であるDNAは、右向きにねじれたらせん状の高分子であることが見いだされ、今日の生物学・医学の発展の基盤となりました。ところがこの間、分子生物学は、高分子科学とは無関係に発展してきているようにも感じられます。訳者の中村桂子さんらは、タイトルを“やわらかな遺伝子”として本書を出版しています。DNAはミクロにみると安定で硬い2重らせん構造をとっていますが、遺伝情報が書きこまれている生物(ゲノム)のDNAは、全長がmmからcmオーダーと、とても長く、かつ“やわらか”な構造をとっています。本書を通読していただくと、著者の主張する、DNAの“やわらかさ”、これはまさに、DNAの高分子としての特質が直接関係しているはずであると、高分子を専門とする読者は気づかれることでしょう。■私の役に立った本中建介のおすすめ京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科教授分野:高分子合成書籍名:高分子合成の実験法著者名:大津隆行、木下雅悦共著出版社:京都:化学同人出版年:1972年参考価格:3,873円絶版本のため中古品のみ入手可有機合成の経験は少しあるけれど、高分子にかかわる講義は受けたことはなく高分子に関する知識も経験もない人が、高分子の合成を行う必要に直面した場合に現在でもうってつけなのが本書である。私は修士課程では分子認識を基礎とする分子集合体に関する研究に従事していたためか、それともあまり講義に出なかったからか、学部および大学院でも高分子にかかわる講義は受けたことがありませんでした。引き続き博士課程でもその研究を続ける予定でしたが、事情により、博士課程に進学するためには研究テーマを代えて同じ専攻内の別の研究室に移動しなければならなくなりました。そこで、今まで経験のなかった高分子を扱ってみたいということで重合化学分野の研究室に入れていただくことになりました。それまでは“ポリメってしまった”は合成に失敗したことであると思っていましたが、見方を変えれば実験が成功したことを意味するんだと思ったことを覚えています。本書は高分子合成と特性解析に関する章とともに、モノマーや開始剤の精製法から重合の仕込み方や単離法、さらには得られた高分子の特性解析のやり方に関する300以上の実験手順が400ページにまとめられ、これ1冊でこれまで高分子を扱った経験がなくても、ある程度は自らの手で合成からその特性解析までできると思わせる構成となっています。出版年が1972年であり、現在は絶版本ですので、中古本か図書館等で実際に手にとってご覧になってください。きっと手元に置いて実験をしてみたくなるはずです。高分子62巻12月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan753