ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

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高分子 POLYMERS 62巻12月号

Scientific News高分子ナノシートを用いた新しい細胞移植基材:ナノカーペットを開発Polymer Preprints Japan, 62, 4837(2013)藤枝俊宣1,2*・森好弘3・伊藤俊太郎3・永井展裕4・西澤松彦3・阿部俊明4・Ali Khademhosseini 1,5・梶弘和3加齢黄斑変性症は網膜組織中心部の黄斑が障害されることにより発症する失明リスクの高い難治性網膜疾患である。今日までに、網膜色素上皮(RPE)細胞を網膜下に直接注入する移植療法が研究されているが、狭小な網膜下に対する移植細胞の送達ならびに生着率の向上が課題である。本研究では、ナノ厚に由来する高い柔軟性を有する高分子ナノシートに着目し、これを細胞移植基材(ナノカーペット)として利用した。ナノカーペットは生分解性高分子であるポリ乳酸グリコール酸共重合体を用いて作製し、膜厚170 nm、直径数百マイクロメートルの円盤型に成型した。RPE細胞を載せたナノカーペットを注射針で吸引・射出したところ、針管内における摩擦にもかかわらず、針内径の2倍以上の直径を有するナノカーペットでも80%以上の細胞生存率を維持した。さらに、豚眼球の網膜下にナノカーペットを注入したところ、網膜下で展開し、元の円盤型に戻った。ナノカーペットは、脆弱な細胞シートの構造を安定に保ち、かつ、注射針挿入時の小さな切開のみで移植することができる。したがって、視細胞以外でもiPS細胞に代表される幹細胞治療への波及効果も期待される。化学工業日報,2013年9月9日朝刊3面T. Fujie, Y. Mori, S. Ito, M. Nishizawa, H. Bae, N. Nagai, H. Onami,T. Abe, A. Khademhosseini, and H. Kaji, Adv. Mater.,in press(DOI: 10.1002/adma.201304183)1東北大学原子分子材料科学高等研究機構2早稲田大学先進理工学部3東北大学大学院工学研究科4東北大学大学院医学系研究科5 Harvard-MIT Div. of Health Sci. & Tech.*E-mail: t.fujie@aoni.waseda.jpナノファイバーを利用したフレキシブル透明導電フィルムを開発Polymer Preprints, Japan, 62, 5201(2013)東啓介*・坂尻浩一・松本英俊・姜聲敏・渡辺順次・戸木田雅利東京工業大学大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻*E-mail: azuma.k.ac@m.titech.ac.jp我々の研究グループは、簡便な作製法で超薄型、軽量、フレキシブルな透明導電フィルムを開発した。具体的には、まず電界紡糸法を用いて高分子ナノファイバーをアルミニウム(Al)蒸着フィルムの表面にネットワーク状に堆積させる(図中a)。これに熱処理を施すと、ナノファイバーはAl表面に密着し、二次元ネットワーク状のマスクを形成する。この表面にエッチング処理を施すと、マスクされていない部分のAlは浸食される一方、マスクされている部分のAlは浸食されず、ナノファイバーの二次元ネットワークの軌跡に沿ってAlナノワイヤーとして残る(b)。最後にマスクを溶剤で取り除く(c)。このようにして得られる透明導電フィルムは高い透明性を維持したまま高い導電性を有している(d)。現在透明導電材料として使用されている酸化インジウムスズは高コストで供給量に限界があることから、将来的にはその代替となることが期待される。化学工業日報,2013年9月2日朝刊8面日刊工業新聞,2013年9月17日朝刊11面日経エレクトロニクス,2013年9月16日pp.14-15760 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻12月号(2013年)