ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
展望COVER STORY: Highlight Reviews特集エネルギーマネジメントに寄与する光・熱制御材料液晶・高分子ハイブリッド調光窓垣内田洋(独)産業技術総合研究所[463-8560]名古屋市守山区下志段味穴ケ洞2266-98主任研究員,博士(工学).専門は光機能材料,光物性.h.kakiuchida@aist.go.jphttp://unit.aist.go.jp/mrisus/ja/group/ecttg.html吉村和記同左研究グループ長,工学博士.専門は薄膜材料,表面物性.k.yoshimura@aist.go.jphttp://unit.aist.go.jp/mrisus/ja/group/ecttg.html荻原昭文神戸市立工業高等専門学校[651-2194]神戸市西区学園東町8-3教授,工学博士.専門は光エレクトロニクス,電子デバイス.ogiwara@kobe-kosen.ac.jpwww.kobe-kosen.ac.jp/department/staff/denshi/ogiwara.html現在普及が進む省エネ窓は、高断熱・高遮熱で建物内外の熱移動を抑えて効果を得ている。しかし性能が固定で、夏冬両方に効果を上げることは難しく、この解決策として、季節に応じ日射制御する調光窓が提案されている。本稿では、その候補として期待される液晶・高分子メゾ相分離構造について、とくにホログラフィック型高分子分散液晶の例を中心に紹介する。1.はじめにオフィスや住宅で、冷暖房により2010年度に消費されたエネルギーは、国内全体のエネルギー消費の約10%を占める1)。一方、建物内外の熱移動の内、窓を通して起こる割合はほかの建築部位に比べて高い。たとえば1992年の省エネ基準住宅で、夏の熱流入の71%、また、冬の熱流出の48%が窓からとの報告がある2)。近年、窓の熱性能は向上してきたが、外壁や屋根などでも、より高い省エネ等級3)に合わせて断熱性が高まってきており、依然として窓は大きな熱損失源である。図1に、日射エネルギー、視感度、室温の熱放射スペクトルを示す4)。本来、窓は室内外を繋ぐ接点であり、採光や眺望、時に通風など人が快適に過ごす役目を演じるため、建物に不可欠である。そのため、可視域(図1緑色スペクトル)での窓の透過性は、ある程度維持する必要があり、この制約下で熱損失を抑えるさまざまな技術が開発され、いわゆる断熱・遮熱性が向上してきた。たとえば、断熱サッシ、複層ガラス、Low-e膜など断熱技術の普及で、熱伝導や対流、そして熱放射(図1の橙色)が抑えられ、近年では真空ガラスと単板ガラス間にArガスを封入した三層構造の、複層真空ガラスなど技術が進み、外壁並みの熱損失に近づいてきた。一方、いわゆる遮熱型Low-e膜の導入で、日射(図1の黄色)の侵入を積極的に抑える機能も向上してきた。しかし図2の通年の気温変化5)で示すように、日本国土に広がる温暖地域には四季の変遷があり、やみくもに遮熱性を高めるのはマイナス効果になる。つまりLow-e膜の導入で、日射透過が通年で減るため、夏は日射による冷房負荷を抑えられるが、冬は却って暖房負荷が高まる弊害が生じる。図1図2日射,視感度,熱放射スペクトル4)と,省エネ窓材で期待される役割のスキーム.外気温の通年での振舞い(緑色)5).27℃以上,15℃以下となる時をそれぞれ黄と水色で背景強調した.この解決策に、季節に応じて日射制御ができる、いわゆる「調光窓材」が提案されている。調光方式はさまざまあるが、材料の視点で分類すると、エレクトロクロミック、ガスクロミック、サーモクロミック、サーモトロピックなどが挙げられ6)~8)、筆者らも積極的にそれらの開発を進めている9)~12)。本稿では、その中でも液晶・高分子のメゾ(スケール)相分離構造を有する熱応答型の調光窓材を中心に、現状と展望を述べる。2.液晶・高分子のメゾ相分離構造液晶と高分子からなるメゾ相分離構造と形成機構に関する化学・物理的な説明は、本誌過去の特集13), 14)も含め、多く文献があるので、ここではその光学的応用、とくに日射制御窓への活用の視点で紹介するに留める。高分子62巻10月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan595