ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
展望COVER STORY: Highlight Reviews住人の生活形式などにより異なり一意に決められないが、図4の計算例などを頼りに、所望の調光性能にあった構造設計をすることが基本手順となる30)。調光窓材として光学設計された格子構造を実現する材料や作製条件を探索する際、1液晶とモノマーとの屈折率関係、2液晶滴のサイズや分布、3液晶滴内の配向秩序を考える必要がある。1は光学構造の基本要素で、液晶の低温と高温相の両方での屈折率を設計しなければならない。とくに液晶は低温で複屈折を示すため、高分子の屈折率との(不)整合性から回折偏光も含めデザインすることになる。2と3については、相分離と液晶配向に関するこれまでの多くの知見を基に、混合原料の種類や組成、また適切な露光条件の探索がおもな作業になる。とくに材料によっては、液晶滴が格子中に規則正しく分散すると、無電場でも液晶分子が配向する傾向があらわれ、この構造に起因する配向秩序が、熱応答型素子の性能に大きく寄与する。HPDLCは、原料や露光条件でさまざまな調光挙動を賦与できる。たとえば図5に示すように、HPDLCに、透過率が角度依存性をもつ市販のフィルムを組み合わせ、波長と入射角に選択性をもたすことで、眺望や採光性を維持した調光が実現できる。このように、さまざまな状況で使用が想定される窓への導入に対応できるよう、日射透過率の温度に対する振舞いを柔軟にデザインできることは実際の応用に向けた本素子の強みである。4.おわりに本稿では、調光窓材への応用に焦点を絞り、筆者らが開発を進めるホログラフィック型高分子分散液晶(HPDLC)を中心に、液晶・高分子のメゾ相分離構造を紹介した。調光窓材は、気候を含め建物の立地や窓の配置、さらに室内の人の活動形態など、さまざまな要素が絡み、一律の解として性能を決めることは容易でない。したがって、さまざまな調光特性をもたせた光学構造を提案し、幅広い使用状況に応えられるよう部材としてのポテンシャルを高める必要がある。一方、材料側の立場から提案するだけでなく、窓を含めた建物熱収支のシミュレーションやフィールド試験で、調光窓として実際に求められる性能を探ることも重要である。今後、実状に沿った性能をもつ調光窓材の開発が期待される。図4図5HPDLC調光性能の光学計算例30).ピッチと厚みに対する調光幅と可視透過率を,それぞれ黒線と色変化の等高線で表現した.素子がBragg回折する条件は白線の下の領域に制限され,これらすべての条件を考慮して所望の格子構造を決める.HPDLCにマイクロルーバフィルムを組み合わせた際の分光透過率の温度に対する振舞い12).日射と外景を想定し,異なる入射角(45°と0°)で測定した.薄橙,薄青色域が,それぞれの角度での調光範囲,黄と緑色域は,図1と同様,日射と視感度を示す.文1)“エネルギー白書”,資源エネルギー庁, p.95(2012)2)“省エネルギー住宅ファクトシートVI”,全国温暖化防止活動推進センター, p.8(2006)3)“省エネルギー対策等級4技術基準”,住宅金融支援機構(2012).4)“板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法”, JIS R3106(1998)5)2000年-標準年気象データ6)C. M. Lampert, Sol. Energy Mater. Sol. Cells, 52, 207(1998)7)C. G. Granqvist, Thin Solid Films, 518, 3046(2010)8)H. Watanabe, Sol. Energy Mater. Sol. Cells, 54, 203(1998)9)K. Yoshimura, et al., Appl. Phys. Lett., 81, 4709(2002)10)K. Tajima, et al., Appl. Phys. Lett., 91, 51908(2007)11)H. Kakiuchida, et al., Sol. Energy Mater. Sol. Cells, 92, 1279(2008)12)H. Kakiuchida, et al., Sol. Energy Mater. Sol. Cells, 94, 1747(2010)13)菊池裕嗣ほか,高分子, 59, 465(2010)14)松山明彦,高分子, 59, 486(2010)15)小出直之,“液晶ポリマーの開発技術―高性能・高機能化―”,CMC出版(2009)p.27816)US Pat. 2010-0259698, RavenBrickLLC17)A. Ogiwara, et al., Opt. Lett., 33, 1521(2008)18)A. Ogiwara, et al., Appl. Opt., 49, 4633(2010)19)H. Kakiuchida, et al., Phys. Rev. E, 86, 061701(2012)20)H. Kakiuchida, et al., SPIE Proc., 8642, 0H(2013)21)A. Y. -G. Fuh, et al., Appl. Phys. Lett., 74, 2572(1999)22)L. V. Natarajan, et al., Chem. Mater., 15, 2477(2003)23)P. S. Drzaic, J. Appl. Phys., 60, 2142(1986)24)T. Kajiyama, et al., Chem. Lett., 18, 813(1989)25)H. Yang, et al., Appl. Phys. Lett., 82, 2407(2003)26)G. Pan, et al., Opt. Mater., 31, 1163(2009)27)H. Kogelnik, Bell Sys. Tech. J., 48, 2909(1969)28)G. Montemezzani, et al., Phys. Rev. E, 55, 1035(1997)29)J.J.Butler,etal.,J.Opt.Soc.Am.B,19,183(2002)30)垣内田洋ほか,“太陽光透過制御素子”,特開2008-134628献高分子62巻10月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan597