ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
COVER STORY: Highlight Reviews展望特集エネルギーマネジメントに寄与する光・熱制御材料高反射率塗料三木勝夫三木コーティング・デザイン事務所[330-0843]さいたま市大宮区吉敷町1-64-1 1810所長.専門は工業化学.miki9@jeans.ocn.ne.jp太陽から地球が受け取るエネルギーを塗膜で反射して宇宙へ帰し、地表を温めるエネルギーを軽減するのが高反射率塗料である。塗料の役割は、保護・美粧・機能であるが、これに反射する機能を付与している。ヒートアイランド対策、省エネルギー対策の材料として工場屋根面、ビル外壁面、道路舗装面、タンク、車両、船舶等に、幅広く応用されてきた。1.はじめに2007年11月17日、スペイン・バレンシアにて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書が承認された。同報告書は、気候システムの温暖化には疑う余地はないとし(過去100年間で地上気温は0.74℃上昇)、気候変動の速さによっては不可逆な影響が引き起こされる可能性があることを指摘した(たとえば1980~1999年比で1.5~2.5℃の気温上昇で20~30%の生物が絶滅)1)。同年4月17日には、国連安全保障理事会が気候変動を安全保障にかかわる問題とみなして初の公開討論を開き、ほぼすべての国が気候変動を緊急性のある問題であると訴え、先進国や島嶼国の多くが気候変動は深刻な問題であり資源の希少化、難民の増加など紛争の原因になりうると指摘した2)。一方、我が国では、都市化の影響により気温が上昇するヒートアイランド問題が深刻となっている。最近100年間に、東京の年平均気温は3.3℃、大阪や名古屋でも2.9℃上昇した。そして、この都市気温の上昇は実際に熱中症患者を増加させている。さらに2011年3月に起こった東日本大震災は発電事情を一変させ、節電が大きな問題となってきている。気候変動、ヒートアイランド、節電それぞれに対策が必要とされているが、高反射率塗料はそのいずれにも有効な対策として貢献できると考えられる。色は熱くなりにくく、黒色は熱くなりやすかったが、色彩と反射率は連動するものと考えられ、反射率を向上させる試みはされなかった。実際、建築材料の日射反射率を見ると、淡色ほど高く、濃色ほど低くなる傾向にある。そのため、顔料メーカーや塗料メーカーは色彩を追求すべく、可視光域(300~780 nm)の分光反射率は測定していたが、近赤外域(780~2500 nm)・全波長域(300~2500 nm)での分光反射率、日射反射率は測定していなかったのである。2.2日射スペクトルと分光反射率実際の日射スペクトルを図1に示す。日射エネルギーのうち約半分は近赤外域(780~2500 nm)で占められることがわかる。つまり、色彩によって決まってしまう可視光域(380~780 nm)の反射率を据え置いても、近赤外域の反射率を向上させれば、色彩と関係なく反射率を向上できることがわかる。近赤外域の反射率を向上させる特殊機能をもつことによって、太陽から地球が受け取るエネルギーを塗装面で反射し、地表を温めるエネルギーを軽減させることを目指したのが高反射率塗料である。2.3日射反射率高反射率塗料の特性を理解するには、分光反射率だけではなく日射反射率を理解する必要がある。指標としては、分光反射率を日射スペクトルで加重平均することにより得られる日射反射率が用いられる。日射反射率は分光反射率特性を数値で評価したもので、塗料2.高反射率塗料2.1塗料の機能塗料の役割は被塗物の保護と美粧、そして特殊機能の付与である。1999年頃まで、塗料設計の際に日射反射率はほとんど考えられてこなかった。白色、シルバー図1日射スペクトル(ASTM G173-03 3),E490-00 4)をもとに筆者が作成)598 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻10月号(2013年)