ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号

ページ
20/82

このページは 高分子 POLYMERS 62巻10月号 の電子ブックに掲載されている20ページの概要です。
10秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

高分子 POLYMERS 62巻10月号

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

高分子 POLYMERS 62巻10月号

COVER STORY: Highlight Reviews展望第四に清浄な粒子状で前処理が不要である。第五に安価である。つまり、バガスは従来のバイオマスの欠点の多くが解消された優れたバイオマス材料である。製糖工場で排出されるバガスは、従来は製糖工場のボイラー燃料として使われてきたが、ボイラーの燃焼効率が向上しバガスが余るようになった。余剰バガスは家畜舍の敷き藁、土壌改良材、家畜飼料などに使われている。いずれも廃棄物であるため安いという理由である。しかし、その構造(図1)を見ると工業材料として非常に魅力的である。数mm~数十mmの空孔を有する多孔体であり、空孔率は90%以上である5)。この多孔性を活かさない手はない。たとえば、バガスをフィラーとしてプラスチックと複合すると、軽量化、コスト低減、防振性、防音性、弾性率、断熱性等の性能が向上する6)。バガス/PPコンポジットは平成24年から高級乗用車のエンジンカバー材として搭載されている7)。バガスやバガス炭は上述したように工業材料としてきわめて魅力的であり、各種用途開発を進めているが、ここでは太陽光吸収・蓄熱材としての性能およびその応用について研究状況と筆者の最近の研究成果を述べる。バガスは無酸素雰囲気中で加熱することで、容易に炭化できる。条件にもよるが賦活処理なしで1000 m 2 /g程度の比表面積が得られ、ある種のガスに対し、優れた吸着特性も発現する8)。バイオマスの炭化は鈴木らによる研究9)があるがバガスの例は少ない。バガス炭は多孔性で一部微結晶性を示すが、大部分は非晶性である(図1の電子線回折、図2のXRD参照)。そのために粉砕処理により簡単にミクロンサイズまで微粉化できる。粉砕後、篩を通して微粒子を集めエチレングリコール(EG)に分散させ、分散液の光吸収性を測定した。UV-VIS-IR領域までフラットな吸収特性を示すことがわかる(図3)。これは特定の官能基による光吸収でなく、バガス炭の多孔構造による吸光機構によるものと思われる。図4にはバガス炭のBET法による全比表面積(SA)とメソ・ミクロポア由来の比表面積を示す5)。比表面積の大部分がSEMで観察されないメソ・ミクロポアによることがわかる。事実SEMで観察される数mm~数十mmの多孔(図1、5)だけではこれほど大きいSAにはならない。すなわち、バガス炭の多孔構造はマクロポア(>50 nm)、図1バガス炭(左上:横断面,左下:縦断面),市販活性炭(右上)のSEM写真およびバガス炭のTEM写真(右下).図3バガス炭のエチレングリコール分散液の光透過性図2炭化温度を変化して生成したバガス炭のXRD図4炭化温度とバガス炭の全炭素率,比表面積602 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻10月号(2013年)