ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
トピックスCOVER STORY: Topics and Products特集エネルギーマネジメントに寄与する光・熱制御材料冷熱蓄熱エネルギーのマイクロカプセル化技術吉田昌弘鹿児島大学大学院理工学研究科化学生命・化学工学専攻(化工コース)[890-0065]鹿児島市郡元1-21-40教授,博士(工学).専門は機能性微粒子.myoshida@cen.kagoshima-u.ac.jphttp://ace.cen.kagoshima-u.ac.jp/~koubutsu/武井孝行同左准教授,博士(工学).専門は生物化学工学.takei@cen.kagoshima-u.ac.jphttp://ace.cen.kagoshima-u.ac.jp/~koubutsu/1.はじめに近年、氷の潜熱を冷熱エネルギーの蓄熱に利用し、電力消費の少ない夜間の余剰電力を用いて製氷し、その氷から昼間の冷房に要する冷熱エネルギーを引き出す氷蓄熱空調システムが脚光を浴びている。このような氷蓄熱空調システムは、消費者側にとって安価な夜間電力の利用で冷房コストを低減できるとともに、空調設備の小型化を図れる一方、電力供給側にとって夏期の冷房にともなう昼間に偏った電力需要を平準化し、もって夏期用としての電力プラントを抑制できるという利点がある。氷蓄熱空調システムにおける蓄熱方式としては、氷蓄熱槽の水中に配置した冷凍機側の熱交換部の表面で固体氷(ソリッドアイス)を生成させるスタティック方式と、熱交換器や製氷機で生成させた流動性をもつ氷を蓄熱槽へ移動させるダイナミック方式があるが、とくに前者のスタティック方式は装置構成的に簡素でかつ運転制御が容易であるために普及型になりつつある。しかし、従来の氷蓄熱空調システムでは、冷熱蓄熱時の製氷に安価な夜間電力を利用できるものの、充分な蓄熱を行うためには消費電力量が大きくなり、しかも氷の熱伝導率が低く、氷自体が厚みを増すことで熱抵抗体となるため、とりわけスタティック方式においては着氷量の増加とともに伝熱特性が悪化し、冷凍機の運転効率が低下するという問題がある。この問題を解決するために、冷熱蓄熱用マイクロカプセルの利用によって消費電力量の大幅な低減と冷凍機の運転効率の向上を図り得る新規な蓄熱方式の氷蓄熱空調システムを提案している1)。本稿では、冷熱蓄熱用マイクロカプセルの研究開発2)~5)について解説する。えられる。まず冷蓄熱媒体として利用する相変化物質として、飽和脂肪酸であるカプリン酸とラウリン酸の2成分混合系に対し脂肪酸系界面活性剤であるオレイン酸ナトリウムやラウリン酸ナトリウムを添加した系について、相変化物質として0℃よりも大きく7℃程度までで利用可能な潜熱蓄熱材に対する詳細な物性評価を行った。具体的には、それぞれの系に対して相変化温度の挙動、過冷却の抑制効果、ならびに相変化にともなう熱量の同定を詳細に検討するととともに、最適な蓄熱組成物質を選定しカプセル化へと繋げた。カプリン酸、ラウリン酸を7:3(モル比)の割合で混合した系において脂肪酸系の界面活性剤を添加することにより、凝固開始温度測定と過冷却抑制効果を評価した。融解開始温度と凝固開始温度の温度差(ΔT)を過冷却と定義し、2成分系飽和脂肪酸(カプリン酸:ラウリン酸(7:3、モル比))の過冷却は、3.0℃であった。オレイン酸ナトリウムを添加した系の過冷却は抑制され、20 wt%添加した系における凝固開始温度は3.0℃まで低下することができた。ラウリン酸ナトリウムを添加した系に関しても同様に過冷却は抑制され、凝固開始温度を6.0℃まで低下させることができた。脂肪酸と界面活性剤の両方の特性を有する脂肪酸系界面活性剤を20 wt%添加することにより、冷蓄熱に最適とされる0~7℃の温度範囲にあることがわかった(図1)。表1にオレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムを添加した系における、過冷却および相変化にとも2.冷熱蓄熱媒体の基礎研究この問題を解決するために氷蓄熱空調システム用として最適な冷熱蓄熱用マイクロカプセルを開発することを提案している。空調設備において冷熱を使用したい場合は7℃の水、温熱においては35℃の水を送水する必要がある。そのため、冷蓄熱に関しては0℃より高く7℃程度で相変化する物質が最も理想であると考図1オレイン酸ナトリウムの添加結果高分子62巻10月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan605