ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
COVER STORY: Topics and Productsトピックス表1相変化にともなう過冷却と熱量なう熱量測定結果を示す。界面活性能を有するオレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムを添加することにより、表1に示した不飽和脂肪酸を添加した系と比較して過冷却がより抑制されていることが確認できた(すべて1.0℃以下)。過冷却現象とは脂肪酸混合物中の結晶核生成速度が遅いことから起こる現象であり、界面活性剤を少量添加することにより、脂肪酸の混合物中にエマルションが生成され、これが凝固における多数の核となるため過冷却がより抑制されたと考えられる。また、相変化にともなう熱量に関しても、不飽和脂肪酸を添加した系(表1)と比較して高い熱量を示しており120 J/g以上の熱量を有することを確認できた。相変化にともなう熱量が増加した原因として、共存塩となるナトリウムを含む脂肪酸を添加したことにより、熱量が増加したものと考えられる。3.冷熱蓄熱用マイクロカプセル冷熱蓄熱媒体のマイクロカプセル化は界面重合法を採用した(図2)。まず、蒸留水300 mlに分散安定剤として、ポリビニルアルコール(PVA重合度1500)を1.5 wt%で溶解させた。次に、有機相として-NCO基を一つ有するジイソシアン酸トリレン(TDI)と、二つ有するイソシアン酸フェニルをモル比において3:1の割合で混合した。さらに、芯物質として使用する冷熱蓄熱媒体(カプリン酸/ラウリン酸=7/3(モル比)にオレイン酸ナトリウム20 wt%を添加した系)を上記物質(ジイソシアン酸トリレンとイソシアン酸フェニルのモル数の合計)に対するモル数として3.8倍使用して調整を行った。連続相となる上記水相を、恒温ジャケット付きの容積800 mlの重合反応器に加えた。さらに調整した有機相を徐々に加え、直径5 cmのスクリュー型二枚羽根を用いて、25℃、120 rpm、窒素雰囲気下で10分間撹拌を行いO/Wエマルションを調製した。引き続き、50℃まで窒素雰囲気下で10分おきに5℃温度を上げ、3時間攪拌を行うことで界面重合反応を行うことで、ポリウレア骨格を有し、冷熱蓄熱媒体を内包するマイクロカプセルを調製した。調製したマイクロカプセルの外観は、球形であり約図2カプセル外殻形成メカニズムの概念図図3冷熱蓄熱媒体を固定化するマイクロカプセル100~300 mmのサイズを有していた。さらに、カプセル内部に固定化した冷熱蓄熱媒体の相変化物質の相変化温度をDSCにて測定したところ、約5.1℃で凝固できることが確認できた。これは、冷熱蓄熱媒体のみで測定を行った結果と近い値である。また、冷熱蓄熱媒体を内包していないマイクロカプセルにおいては、この温度域で凝固ピークを確認することはできなかったことより、冷熱蓄熱媒体をカプセル内に包括固定化できた結果であると言える。4.おわりに開発した冷熱蓄熱用マイクロカプセルは、内包する冷熱媒体の相変化温度が0~7℃であるため、その相変化の潜熱を氷蓄熱空調システムにおける冷熱蓄熱つまり冷熱エネルギーの貯蔵に好適に利用できる。さらに、マイクロカプセルとして比較的に大きい粒度を有することから、マイクロカプセル中に占める冷熱媒体の比率が大きいために高い蓄熱効率および容積効率が得られるであろう。1)吉田昌弘ら,特開2009-19857(2009)2)松井務ら,化学工学論文集, 28, 451(2002)3)T. Matsui, et al., Chem. Eng. Commun., 194, 129(2007)4)吉田昌弘ら,特開2007-244935(2007)5)T. Takei, et al., Polym. Polym. Composit., 17, 347(2009)文献606 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻10月号(2013年)