ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
トピックスCOVER STORY: Topics and Products特集エネルギーマネジメントに寄与する光・熱制御材料銀ナノ石畳による熱線遮蔽技術谷武晴富士フイルム(株)R&D統括本部先端コア技術研究所[258-8577]神奈川県足柄上郡開成町牛島577主任研究員.専門は光学.takeharu_tani@fujifilm.co.jpwww.fujifilm.jp1.はじめに筆者らは、夏場の空調に要する消費電力の低減に貢献する、新方式の赤外線遮蔽フィルムの開発を行った1)。太陽光は、可視光だけでなく、紫外線・赤外線を含んでいる。中でも、赤外線は、地上に到達する日射エネルギーの約半分を占め、室温を上昇させる原因となる。窓用の遮熱フィルムは、可視光線を透過しつつ、赤外線を遮断する透明なフィルム材料である(図1)。遮熱フィルムはこれまでも、各種方式が提案されており、遮蔽の方式により、吸収型、反射型が存在する。吸収型の場合、フィルムで吸収された熱の一部が、室内に再放射されてしまうため、反射型のほうが好ましい。また、遮熱特性のほかに、携帯電話などの使用を妨げないため、電波透過性をもつこと、窓からのクリアな視界を確保するために、可視光の透過率が高く、散乱が少ないことなどの特性が求められる。筆者らは、円盤状の銀ナノ粒子を高密度に敷き詰めた、銀ナノ石畳構造が、可視光を透過しつつ、近赤外線を反射し、熱線遮蔽の効果をもつことを見いだした。提案した構造は、微粒子のランダム分散構造であり、大面積フィルムの作製に適している。光を電磁場として取り扱う、電磁場光学シミュレーションによる設計を行い構造を最適化したうえで、実際にフィルムを作製し、遮熱フィルムとしての実用化を果たした。ズの金属粒子に特有の光学特性として、局在プラズモン共鳴がある2)。局在プラズモン共鳴は、金属の自由電子と、光の電場が共鳴した状態であり、光を強く吸収、散乱する現象である。近赤外域に共鳴をもつ金属粒子をフィルムに分散させることで、遮熱特性が得られる。局在プラズモン共鳴の波長は、金属種、粒子形状、サイズなどに依存して変化する。今回、金属には、局在プラズモン共鳴を強く起こす材料として銀を用いた。また、共鳴波長を制御するため、円盤状の粒子を用いた。円盤状の粒子は、アスペクト比(直径/厚み)によって、共鳴波長が大きく変化する3)。図2に、銀粒子のアスペクト比を変え、消失断面積を計算した結果を示す。可視~近赤外にかけて大きく共鳴波長が変化し、アスペクト比10程度以上で近赤外域に共鳴をもつことがわかる。ただし、単に円盤状の銀粒子を分散させるだけでは、吸収が支配的となる。また、可視光を散乱し窓用の遮熱フィルムには適さない。銀ナノ石畳構造は、粒子を単層、高密度に充填することで、共鳴状態での反射率を高める設計としている。また、可視光の波長サイズより小さくすることで、光に対し均質な膜と見なせる構造となり散乱が低減する。3.電磁場光学計算による構造設計原理検証ならびに、構造の最適化のため、電磁場光学領域の計算機シミュレーションで銀ナノ石畳構造の2.原理銀ナノ石畳は、粒径の揃った、平板状の銀微粒子を、単層でランダムに分散配置した構造である。ナノサイ図1遮熱フィルム概念図図2銀ナノディスク消失断面積のアスペクト比依存性高分子62巻10月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan607