ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
COVER STORY: Topics and Productsトピックス図3計算モデルと計算結果例図5作製フィルムの外観写真1um図4銀ナノ石畳構造の電子顕微鏡像光学特性を予測した。計算手法として、任意の粒子形状、配置を取り扱うのに適した、FDTD法を用いた。FDTD法は、空間を格子に分割し、Maxwell方程式に基づき、電磁場の時間変化を数値的に計算する手法である。図3に計算例を示す。直径120 nm、厚み10 nmの銀粒子を乱数に基づき、ランダムに空間配置した形状モデルと、プラズモン共鳴状態での、光強度分布の計算例である。粒子が高密度に分散した状態では、近接した粒子間で相互作用を生じている様子が見られる。粒子サイズ、形状、面密度などを変化させ、透過、反射、吸収率ならびに、散乱光量などの特性を予測し、遮熱フィルムに適した、銀ナノ石畳構造を設計した。4.作製結果計算で得た設計指針に基づき、遮熱フィルムを作製した。銀の異方結晶成長によって、形状を制御した平板状の銀粒子を合成し、フィルム上に塗布した。図4に、電子顕微鏡写真を示す。粒径の揃った銀平板が、重なりなく、単層で高密度に分散されており、計算で想定したとおりの銀ナノ石畳構造を得ることができた。図5に作製したフィルムの外観写真を示す。曇りのない透明なフィルムであり、窓貼用のフィルムとして用いることができる。図6に、作製したフィルムの透過・反射スペクトルの測定結果を示す。可視光領域で80%程度の透過率を維持しつつ、900 nm付近の近赤外光を反射し、遮断していることがわかる。本フィルムをベー図6作製フィルムの透過・反射スペクトルスとして、遮熱フィルムを作製し、実際に窓に貼り付け、窓辺の温度が5度低くなる結果を得た。5.おわりに今回、局在プラズモン共鳴を用いた、近赤外線の遮蔽フィルムを開発した。本フィルムは、大面積での作製が可能であり、太陽光の熱の室内への流入を防ぐ遮熱用として実用性の高いフィルムである。また、ここで提案した銀ナノ石畳構造は、わずか10nmの厚さで、大きな波長選択性をもつ。本技術のように、波長サイズ以下の微細構造によって生み出される光機能は、近年注目の高まっている、メタマテリアルと考えることもでき、物理的にも興味深い構造であると考える4)。文1)白田,谷,清都,鎌田,納谷,第59回応用物理学関係連合講演会,18a-B11-2(2012)2)K. A. Willets and R. P. Van Duyne, Annu. Rev. Phys. Chem., 58, 267(2007)3)R. Jin, et. al., Nature, 425, 487(2003)4)“メタマテリアル―最新技術と応用―”,石原照也監修,シーエムシー出版(2007)献608 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻10月号(2013年)