ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
トピックスCOVER STORY: Topics and Products特集エネルギーマネジメントに寄与する光・熱制御材料CNT分散制御による絶縁樹脂の高熱伝導化技術福森健三(株)豊田中央研究所有機材料プロセス研究室[480-1192]長久手市横道41-1主席研究員,工学博士.専門はポリマーブレンド・アロイ材料,エラストマー材料物性.fukumori-k@mosk.tytlabs.co.jpwww.tytlabs.co.jp1.はじめに自動車にかかわる熱制御として、蓄熱、熱電変換、断熱、放熱等のさまざまな技術開発が進められている。とくに近年の電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)の普及の中で、新たな心臓部としての電動モーターやパワーコントロールユニットの導入とともに、電気・電子系部品の小型化、高出力化にともなう各部品(とくに絶縁部位)の放熱性向上がきわめて重要となっている。最も汎用、かつ優れた絶縁性を有する樹脂材料(絶縁樹脂)の熱伝導率は無機材料や金属材料に比べて1/10~1/10000ときわめて低いレベルにあるため、系の放熱性向上の課題に対し、絶縁樹脂の高熱伝導化がキー技術と位置づけられる。絶縁樹脂の高熱伝導化技術として、樹脂にアルミナ(Al 2 O 3)、窒化ホウ素(BN)等の熱伝導性無機フィラーを大量(50 vol%以上)に配合しフィラー同士の接触を通じて系全体の熱伝導パスを確保する方法が一般的であるが、最近では分子構造中にビフェニル基のような剛直で液晶性を発現するメソゲン骨格を導入し、樹脂相の熱伝導率を高める技術の有効性が示されている。さらなる系の高熱伝導化のニーズに対して、実用上、前者では熱伝導フィラーの大量配合にともなう系の流動性低下や高比重化、また後者では特定樹脂を対象とする点や分子構造制御にともなう樹脂特性への影響が懸念される。ここでは、各種絶縁樹脂系の高熱伝導化に有効な新規手法として、最高レベルの熱伝導率と導電率を併せもつカーボンナノチューブ(CNT)を用いて、樹脂の特長である高絶縁性を維持し、かつ少量添加で樹脂相の熱伝導率を効率的に高めることを狙いとした基本技術(新規CNT分散構造モデルとそれに基づく材料創製)1),2)と、その応用について紹介する。性が高いブレンド成分樹脂からなる分散相内に少量(1 vol%以下)のCNTを局在化させ、さらにCNTに対する排除作用をもち、マトリックス樹脂へのCNTの移行を妨げる殻層を界面に配置した新規CNT分散構造モデル(図1(a))を考案した。この構造モデルでは、CNT添加にともない系の熱伝導率向上が達成されるとともに、CNTが局在化した分散相が独立分散することでCNT同士の接触を通じた電気伝導パス形成の機会がなく、系全体の絶縁性が維持される。本モデルに基づくCNT分散構造が制御されたCNT/樹脂複合体は、通常のポリマーブレンド・アロイと同様に、各構成樹脂の2軸押出混練プロセスにより作製した。目的のCNT/樹脂複合体は、高い耐熱性や優れた耐薬品性をもつ代表的なスーパーエンプラであるポリフェニレンサルファ図1(a)新規考案のCNT分散構造モデル2.CNTを用いた樹脂の高熱伝導化技術1)ダイヤモンドと同等の1000 Wm-1 K-1オーダの熱伝導率(銅の約10倍)を有するCNTに着目した。CNTの分散にともなう絶縁樹脂への導電性付与を阻止するため、主成分(マトリックス)樹脂中のCNTとの親和図1(b)CNT/PPS/PE/EGMA系の透過電子顕微鏡写真高分子62巻10月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan609