ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
高分子科学最近の進歩Front-Line Polymer Science3.2mmキャビティN 2 /CO 2金型射出発泡断面拡大写真Step1CX-5エンジンカバー図3マイクロセルラーフォームのエンジンカバー(マツダ・ダイキョウニシカワ提供)左半分の金型を可動させるコアバックと発泡Step2図4コアバック射出発泡成形図5微細発泡PETボトルFi-CellR 7)(東洋製罐提供)剤となるCO 2やN 2を高圧で導入し、溶融高分子に混ぜ溶かし込む。その後、そのCO 2やN 2が溶解した高分子を金型内の製品の形状をした空間(キャビティ)に射出し冷却して高分子を固化させる。冷却過程のある時点で、金型の一部を動かし、キャビティ体積を増加させて(この操作をコアバックという)、キャビティ内の高分子に印加されている圧力を急激に低下させ、気泡核生成を誘起することにより、高分子を発泡させる(図4)。図5は、インジェクションブローという成形法で作られたマイクロセルラーフォームのPETボトル容器である7)。インジェクションブローとは、射出成形機に発泡剤となるCO 2やN 2を高圧で導入し溶融高分子に混ぜ込み、金型内のキャビティに射出するところまではコアバック射出発泡成形と同じである。射出によりプリフォームと呼ばれるボトル容器のもと(試験管のようなもの)を作るが、このときはコアバックはせずに発泡させないで固化させる。そのプリフォームを取り出し、次のプロセスで、ペットボトルの形状の型に入れてプリフォームを加温すると同時に空気を入れて膨らませる。この際の昇温でプリフォームに含まれていたCO 2やN 2を過飽和状態にして発泡させる(図6)。こうして作られた発泡PETボトルでは、微細気泡が光を反射するために、透明な容器が銀色に光り、容器に遮光性をもたせることができるようになっている(図5)。セル密度を制御することで、その色合いも制御できている。このようにCO 2とN 2を使った発泡成形は、工業化のレベルに到達し、さまざまな部材として市場に出てきている。したがって、今日、研究開発の対象は、自ずとセルサイズがマイクロからさらに小さいナノメータスケールのナノセルラーフォームになっていった。4.ナノセルラーフォームここ数年、さまざまな手法でナノセルラーフォームが作製されている。現在までに発泡技術に関連して提案されているおもな手法は以下の通りである。1)テンプレート法、2)カプセル法、3)化学発泡法、4)物理発泡法Step2 Step 3N 2/CO 2射出Step1空気の吹き込み図6インジェクションブロー発泡以下順にそれぞれの手法の最新の動きを説明していこう。4.1テンプレート法テンプレート法の基本的な手順は、ナノスケールの大きさの分散相をもつ不均質な固体あるいは溶液を作り、抽出あるいは熱分解により分散相を除去し、固体・液体中に数十nmサイズの孔を作り出す手法である。たとえば、1997年にRussellらのグループは、低誘電率の電子部材の開発を目的として、ポリイミドの前駆体とポリエチレンオキサイドのオリゴマーから作られたブロックポリマーをテンプレート形成材料とし、熱処理によりポリエチレンオキサイドを分解してナノフォーム(空隙が最大で24%)が作製できることを示している16)。その後、この分野では、スターポリマーやデンドリティックな高分子を分散相の形成に使うなどして、孔の安定化・微細化の工夫がなされてきたが、いまだミクロ相分離構造自体の不安定性の問題や分散相除去プロセスでのセル構造破壊の問題の解決が不十分なまま残っている。したがって、テンプレート法の研究開発は、さまざまなブロックポリマーを素材として利用することの検討やマトリクス側の材料の構造強度を上げる検討に加えて、分散相除去プロセスでのセル構造の破壊が起こらないようにする工夫に向けられている。山本らは、この分散相除去プロセスでのセル構造破壊の問題を回避するために超臨界乾燥技術を融合させ高分子62巻10月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan615