ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号

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高分子 POLYMERS 62巻10月号

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概要

高分子 POLYMERS 62巻10月号

Front-Line Polymer Science高分子科学最近の進歩た17)。すなわち、感光性ポリイミド前駆体にポリチレングリコールオリゴマーを混ぜ、液・液相分離構造を形成させ、UV露光と加熱により、その相分離構造を固定化し、その後、構造を崩さないように超臨界CO 2を用いて分散相を選択的に除去し空孔化させる手法を提案している(図7)。この手法により、空隙率が最大38%でセル径が数百nmの独立泡をもった低誘電率多孔フィルム(10 mm厚み)を形成している。数年前にバイエル社が、分散相を最初から気体あるいは揮発性液体にして分散相除去による構造破壊の問題を回避した超臨界マイクロエマルジョン法という手法を適用し、ナノセルラーウレタンフォーム(150 nm以下の直径)を工業化したと報じている18)。超臨界マイクロエマルジョン法19),20)は、図8に示すように、三つのステップから構成されている:第一ステップでは、CO 2雰囲気下でプロパンをコア材として界面活性剤を使ってミセル溶液を形成する。第二ステップでは、CO 2を臨界温度(Tc)、臨界圧(Pc)以上に加圧し、プロパンとCO 2を置換し安定なマイクロエマルジョンを作る。最後のステップで、減圧操作を施し、ミセル内に存在していたCO 2を体積膨張させミセルを膨らませパッキングさせてフォームを形成させている。界面活性剤を使ってミセルというナノスケールサイズの分散相を作り、加圧操作によりミセル内に液体の物質を封じ込めることや、その物質を減圧操作で気化させることで分散相の除去操作を容易にしている。バUV照射PSPI前駆体+添加剤基板相分離したPSPIフィルムUV露光による固定化超臨界CO2による分散相除去多孔化図7相分離テンプレート法17)イエル社は、水を分散相とし、ポリオールとイソシアネートの混合物をミセル溶液にして、この手法の工程中で、ウレタン反応を進行させることで、マトリクス側の構造を強化しウレタンのナノセルラーフォームを開発している18)。4.2ナノカプセル法マイクロエマルジョン法を発展させたものにナノカプセル法がある。これは、中空状のカプセルあるいは内部に発泡剤を含有したカプセルを作製し、そのカプセルと多孔化したい高分子とを混ぜ、加温や減圧によりカプセルを高分子中で膨張させ発泡体を作る手法である。カプセルが分散相をテンプレートとするエマルジョン重合で作られることからマイクロエマルジョン法の発展的手法ともいえる。カプセルがマイクロオーダの径のものは、すでに、マイクロカプセルあるいはマイクロバルーンと称して靴底などの製品に使われている10)~12)。図9は、現行のマイクロカプセルのSEM写真(左)とLuoらのナノカプセルのTEM写真(右)21)である。彼らは、界面可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法を使って、パラフィンをコア材、スチレンモノマーあるいはメタクリル酸グリシジル(GMA)をシェル材、ジビニルベンゼン(DVB)をシェルの高分子の架橋剤として用い、100 nm径のナノカプセルを作っている。彼らは、さらに反応性をもつエポキシ基を高分子シェルに導入し、ナノカプセル同士をパッキングさせたモノリス構造体を作製し、セル径を平均600 nmと微細に保ったまま、空隙率が86%でバルク密度が0.15 g/cm 3と驚異的な空隙率をもったバルク多孔体を作製している。ごく最近、ポリスチレンナノ粒子(200 nm径)をN 2で発泡させて中空化したカプセルを作り(図10)、フォームを作らずに、その中空粒子をナノリアクターとして利用することも提案されている22)。4.3化学発泡法化学発泡法を使ったナノセルラーフォームとして、小島らの研究が工業的にも興味深い12),23)。彼らは、ターシャルブチル(tert-butyl)基を有し酸と反応してガス化する分解特性をもった高分子に、光酸発生剤(PhotoAcid Generator:PAG)を添加し、その高分子に紫外線(UV)や電子線(EB)を照射してナノセルラーフォームを作る手法を開発している。PAGはUVやEBマイクロカプセル10)ナノカプセル21)図8超臨界マイクロエマルジョン法18)~20)図9マイクロ・ナノカプセルの写真616 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻10月号(2013年)