ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
- ページ
- 36/82
このページは 高分子 POLYMERS 62巻10月号 の電子ブックに掲載されている36ページの概要です。
10秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 高分子 POLYMERS 62巻10月号 の電子ブックに掲載されている36ページの概要です。
10秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
高分子 POLYMERS 62巻10月号
Front-Line Polymer Science高分子科学最近の進歩a)PEEK/PEIのモルホロジーのTEM像.(スケール500 nm)白:PEI,黒:PEEKb)PEEK/PEIナノセルラーのSEM像:(スケール100 nm)白:PEEK,黒:PEI図12 PEEK/PEIの発泡前後33)図14コアバック射出発泡成形法で作製したオープンセルのマイクロ・ナノセルラーフォーム37)(2μm)図13 PPの発泡により作られた繊維上構造36),37)結晶相とアモルファス相の構造的不均質性を活かした物理発泡法によるナノセルラーフォームが紹介されている。Huらのグループは、結晶化度の高い、ポリプロピレン(PP)をCO 2で物理発泡させると図13(左)に示すように結晶ラメラ間で発泡が起こり、微細な繊維状構造が現れることを述べている34),35)。筆者らのグループも立体規則性の高いPPのホモポリマーにソルビトール系の結晶核剤を添加した後、CO 2で物理発泡させると図13(右)に示すように、さらに繊維化が進んだ構造が現れることを確認している36),37)。結晶が、気泡核生成の核剤として機能することや、気泡が結晶とアモルファスの界面で膨張することで応力が働き、その結果クレーズ現象が誘起され繊維構造が創出されたと考えられている。しかし、物理発泡法で作製される、今まで報告されているナノセルラーフォームでは、孔径は、ナノスケールになっているものの、バルク密度は従来の発泡体のようには小さくならない。すなわち、孔径は小さくはできるが空隙率が大きくできていない。それに対して、結晶・アモルファスが作り出す構造の不均質性をソルビトール系の結晶核剤でさらに増長させ(結晶系を微細化し、結晶密度を増加)、射出発泡成形で意図的に延伸操作を施すことにより、マイクロセルラーとナノセルラーが共存するような構造の発泡体を形成し、空隙率80%を達成している(図14)。4.5ナノセルラーフォームの機能ナノセルラーフォームは、a)極薄の高分子発泡フィルムが作れること、b)マイクロセルラーフォームに比べて、多孔化しても機械的強度がより下がりにくくなること、c)セル径を100 nmオーダーにすれば可視光領域での光反射・散乱特性が高くなる。さらに、セル径が数十nmオーダーでは、透明性、低屈折率性をもつこと、d)セル径を空気の平均自由行程よりも小さくできれば、クヌッセン効果により、熱伝導率を小さくし、断熱性が高くできることe)オープンセルのナノセルラーフォームでは、特定の周波数帯で高い吸音特性が生まれること、などの機能が期待されている。しかし、上述したa)~e)の性能が、孔径よりも空隙率に大きく依存するため、空隙率の低いナノセルラーフォームでは、現状、期待されているほどの性能が発揮できているものはない。5.おわりに発泡体の孔径のナノスケール化に焦点を絞り、最近の技術動向をまとめてみた。述べてきたように、期待されている機能が十分に発揮できる高空隙率でナノスケール孔をもつ発泡体は未だ完成されていない。その意味では、まだまだ研究開発を続けていかねばならない。発想を変えた創成法が必要になるかもしれない。微細化以外の観点で忘れてはならないのは、新たな発泡剤の開発である。近年、温暖化係数がブタンなみで、不燃性の発泡剤がハネウエル社やダウ・ケミカル社から商品化されている。ウレタンの化学発泡については、CO 2やN 2ではなく、新しい発泡ガス38)を使った製造が進められるであろう。また、ごく最近、BASF社から発泡熱可塑性ポリウレタンビーズが商品化されている。従来の発泡スチロールにはない、クッション性や柔軟性をもっていることから、注目が集まっている39)。古くからある技術であるが、まだまだ、発泡技術の進展に終わりはない。文1)“プラスチック成形加工Ⅳ「先端成形加工技術」”,プラスチック成形加工学会編,シグマ出版,東京(1999)p.2132)“Foam Extrusion ? Principle and Practice”, S. T. Lee, Eds., Tehnomic,献618 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻10月号(2013年)