ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
MACRO EconomyMACRO経済今後の高分子技術の動向を占います!テレビやパソコン、スマホに不可欠…日本が誇る電子材料平岡乾日刊工業新聞社2008年日刊工業新聞社入社.入社から4年間,群馬支局で自動車部品加工などを手がける中小企業の製造現場を歩いてまわる.2012年から機能化学品を中心とした化学業界を担当.趣味は激辛料理めぐり.液晶テレビパネルやパソコンなどのエレクトロニクス産業の主要プレーヤーが韓国や台湾、中国に移る中でも、その素材は日本企業が今も高いシェアを維持しています。たとえば、液晶テレビの主要部品である偏光板に使われる各種の光学フィルムでは、シェア約8割を握るクラレの偏光フィルムを筆頭に、日本の素材メーカーによる寡占状態です。液晶、カラーフィルター、バックライト用光学フィルムといった部材各種でも日本企業が高いシェアを維持しています。半導体の製造に使うフォトレジストもJSRや東京応化工業などが過半のシェアをもちます。またトクヤマの多結晶シリコン、信越化学工業やSUMCOのシリコンウエハー、住友ベークライトや日立化成の半導体用封止材なども高いシェアをもつ部材です。近年市場が急拡大しているスマートフォンやタブレット端末といった先端のモバイル機器は処理速度や画質に加え、省エネ性や省スペース性が同時に要求されるため、日系企業の先端素材が活きる用途となっています。スマホのプロセッサやメモリーの製造には、先端のフォトレジストが欠かせません。薄型化が進む偏光板では、クラレが厚さ30 mmの偏光フィルム、その上下を挟む保護フィルムではコニカミノルタや富士フイルムが従来の約半分となる同25 mmの薄型フィルムを開発。薄いフィルムでは素材設計からハンドリングといった物理的要因が複雑に絡み合うため、新興メーカーの追随を許しません。課題もあります。機能的に成熟し、汎用化しつつある液晶テレビやパソコン向けの素材は単価が急速に下落。偏光板やバックライトユニットに使われるフィルムの一部では年率20%を超える単価下落に見舞われました。一部の部材には新規参入する新興企業もあり、素材にも汎用化の流れが直撃しています。電子材料に押し寄せる汎用化の波に対し、日立化成や住友ベークライト、JSRなどは素材の設計や原料調達を見直して廉価な製品を投入したり、韓国や台湾、中国での生産を増やしたりするなど、テレビやパソコンといった「ボリュームゾーン」でのシェア維持に努めています。また急成長を続けているスマホとタブレットがパソコン市場を侵食していると考えられています。スマホやタブレットは一台あたりの部材使用量が少ないのが実情。23年度の決算では、信越化学工業でシリコンウエハー、日立化成で封止材などの販売量が前年度より低下しました。両社ともテレビやパソコンの市況低迷をスマホ向けの販売増でカバーしきれなかった可能性があると推測しています。さらに先進国でスマホの普及が一巡したこともあり、昨年末からは米アップル製など先端機種の成長速度が鈍化しています。代わって中国勢など新興メーカーによる「100$スマホ」などと称される低価格機種がボリュームゾーンとなれば、スマホ向けの先端素材にも単価下落の圧力が高まりそうです。しかし、現状では軽薄短小が求められるスマホには高品質の素材が不可欠とされ、さらに中国勢は高級品シフトを進めています。日立化成が新興企業向けの受注を増やしているなど、日本企業には追い風が吹いています。KEIZAIワーズボリュームゾーン(Volume Zone)新興国市場の中間所得層向けの製品・サービスを指します。市場規模は大きいものの、先進国向けの製品に対し、機能を絞るなどして価格を抑えるのが一般的な考え方です。最近では、電気自動車用の先端のリチウムイオン2次電池に対し、パソコンなど市場規模は大きいが厳しい価格競争を強いられる用途をボリュームゾーンと呼ぶ場合もあります。*は、e!高分子のSupporting Informationにハイパーリンクされています。620 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻10月号(2013年)