ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻10月号
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高分子 POLYMERS 62巻10月号
PolySCHOLA測る2限目の2倍以上の引張り強度7.1 GPaが実現しています。同じく表1に示したポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維の引張り強度はポリエチレン繊維よりもさらに高い値、5.8 GPaを示し、有機材料としてはチャンピオンです。以上のように、単純に断面積当たりで比べても、高分子材料の引張り強度は、理論上だけでなく、市販繊維のレベルで、鉄を凌駕すると言い切れるようになっています。3.引張り強度を測るための試料の調製とコツ引張り強度を測定するためには、まず両端をつかめる試料片を用意します。試料が粉末や粒状(ペレット)の場合は、ⅰ)熱をかけてメルトプレスするか、ⅱ)溶媒にいったん溶かしたのちに乾燥させることでフィルムにする(キャスト)か、ⅲ)紡糸するか、ⅳ)射出・押出等の成形を行うか、して試料片を作製します。もちろん試料が、元々フィルムやシート、糸状の試料でしたら、そのまま測定に掛けることができます。試料の周縁部に傷があると、そこに応力が集中して破壊の起点になるため、引張り強度がかなり低めに見積もられることがありますから、試験片の作製には細心の注意が必要となります。試料の断面積の測定誤差はそのまま引張り強度の誤差につながります。糸や矩形試料では顕微鏡などで外寸を測るよりも、重量/(長さ×密度)を測定することで断面積を見積もることをお勧めします。フィルムやシートの場合は中央部がくびれたダンベル形状に試験片を成形・加工します。この場合は中央部の厚みと幅から断面積を算出します。厚みの測定は、試料片作製時に生じる表面の突起などに注意してマイクロメーター、ダイヤルゲージ、ノギスなどで何カ所か複数行いましょう。ゴム、プラスチックなどの材料によってダンベルの形にはJISなどの規格がありますので参照してください。試料調製の際に大事なことの一つは乾燥です。溶媒や水は可塑剤として引張り強度を著しく低下させますから、キャスト時の溶媒が除去されているかどうか、吸湿しているかどうか、をチェックすることが重要です。もしも吸湿している恐れがあれば、たとえば120℃、減圧下で一定重量に達するまで(数時間以上が必要です)乾燥させてください。ただし、試料によって熱分解する場合や、乾燥が熱処理をともなって構造が変化する場合には注意が必要です。この場合、室温で減圧乾燥することになりますが、溶媒は試料から結構抜け難いことを心に留めておいてください。4.引張り強度測定のための装置と使い方試料が準備できたら実際の引張り強度の測定に進みましょう。定量的な引張り強度の測定には目的に合った装置が必要になります。図2には、市販されている引張り試験機の概要を模式的に示しました。図中の治具の部分に治具Aを入れてみましょう。試料片の両端をつかみ具(チャック)で固定します。チャック部分で滑ってはいけないので、必要に応じてサンドペーパー(#1000)、あるいは厚紙にエポキシ樹脂を薄く塗布したもので試料片の両端を挟んだりします。図の例ではダンベル形の試料片を取り付けています。変形させる方向に平行に、たるみやねじれ、ツッパリがないように試料をセットすることが大事です。さて測定を始めます。装置両側のねじり棒を回転させると、クロスヘッドが一定速度で上昇する機構になっています。クロスヘッドが上昇すると試料は引張られていきます。試料に加わる力Fを検出器で刻々読み取って、初期断面積で割ると応力sになります。一方、クロスヘッドの移動から材料の伸びDLを測定し、元の長さLで割るとひずみeになります。試料片に標線を描いて、標線間距離の広がりを求めれば、より正確なひずみ測定になります。チャック間の距離(原長)として10~100 mm、引張速度は1~10 mm/minがよく採用されます。これらsとeの関係を描くと、図3に示した曲線が測定機に自記記録されます。これを応力-ひずみ曲線と呼びます。この曲線を変形の初期から眺めていくと、まず初期勾配から弾性率(引張り変形の弾性率をヤング率、縦弾性係数と呼ぶこともあります)が得られます。次に現れる曲線の極大は降伏を意味します。そこでの応力、ひずみはそれぞれ降伏応力、降伏ひずみと呼ばれます。最終的に材料は破断するわけですが、破断時の応力、図2引張り試験機の概要622 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻10月号(2013年)