ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻11月号
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高分子 POLYMERS 62巻11月号
COVER STORY: Highlight Reviews展望図1ゴム中のフィラー階層構造モデル図3二次元散乱強度I(q)からS(q)の算出例図2ゴム中のシリカからのX線散乱強度曲線図4 RMCによる延伸過程におけるシリカ三次元構造の可視化得られるようになってきている3)。ここではTEMTに対し、平均情報であるが統計的な構造情報が得られる2D-USAXS/SAXS法により解析を行った例を紹介する。USAXS、SAXSデータを組み合わせることで、5 mm~0.6nmまでの幅広いスケールにおける構造解析が可能となる。シリカ充填ゴムの2D-USAXS/SAXS計測から得られる一次元散乱強度曲線を図2に示す。シリカは図1に示すように階層構造を形成している。このような散乱強度曲線を解析する方法として、凝集体(あるいは粒子)の大きさに関係するギニエ領域とフラクタル次元が交互に繋がったモデルを仮定したUnified Approach 4)が知られ、シリカ一次粒子サイズや表面フラクタル次元、高次凝集構造サイズを求められる。SAXSでは、統計的な平均情報が得られるため、TEMなどの観察では一見わからないゴム中のシリカ粒子の濃度揺らぎに起因する凝集構造のサイズや量に関する情報が得られる有力な手法と言える。筆者らは、本手法を低燃費タイヤ用ゴムの開発に応用し、高次凝集構造の存在がゴム内部でのエネルギーロスを増大させていることを突き止め、シリカ充填ゴムのエネルギーロスを約40%低減させることに成功させた5)。2.2 RMCによる可視化とシミュレーションX線散乱法は、散乱振幅の絶対値の二乗である散乱強度を検出している。そのため、位相情報が得ることができないため、X線散乱データから直接構造を求めることができない(位相問題と呼ばれる)。そのため、構造規則性のない試料では、構造モデルを構築することは永きに渡る課題である。それを解決する一つの手法がリバースモンテカルロ法(Reverse Monte Carlo Method:RMC)である6)。通常、X線小角散乱法から得られる散乱強度I(q)は粒子の形状に起因した形状因子F(q)と、粒子の配置に起因した構造因子S(q)の積で与えられる。S(q)は気体分子などの希薄な系においてはS(q)=1となる。一方、濃厚系においては、粒子間干渉の効果が無視できなくS(q)が1でなくなる。RMC法の一例として、コンピューター上に粒子を配置し、S(q)に一致するまで粒子を動かしながら構造モデルを決定していく方法である。具体的な事例として、ゴム中に単分散粒径シリカを配合し、その延伸過程におけるシリカ配置の変化を求めた結果を示す。単分散粒径シリカの場合、F(q)は解析的に与えられる。したがって、X線散乱法により実測したI(q)を計算で求めたF(q)で割ることによってS(q)を求めることができる(図3)。このS(q)を用いてRMC解析することで、図4に示すような延伸過程におけるシリカ三次元配置の変化を可視化することに成功している7)。このような構造モデルを得る恩恵は、シミュレーションに応用できる点にあろう。3.X線イメージング法逆空間情報が得られる散乱法に対し、X線を利用した実空間観察手法がX線イメージングとなる。X線イ670 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻11月号(2013年)