ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻11月号
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高分子 POLYMERS 62巻11月号
COVER STORY: Topics and Productsトピックス図4X線Talbot干渉計を用いた位相敏感X線顕微鏡(a),および,PS/PMMA/PB三成分ブレンド試料の位相CT像(b)図2PS/PMMAブレンド試料のX線位相CT撮影結果(a,b).(c)は(a)の白線上のプロファイル.(d)は(a)のヒストグラム.ルチスリットと併せて使用することにより、同様な撮影が可能である(図3(b):Talbot-Lau干渉計)。図3(c)は実験室に構築したX線Talbot-Lau干渉計を用いて撮影したPS/PMMAのブレンド試料の位相CT像である(縦割り方向の断面)。ここでは、相分離時間(高温でアニールした時間)が異なる複数の試料を並べて接着し、一緒にスキャンした。相分離時間に依存して、相分離の構造が粗大化していく経過が見てとれる。3.今後の展開図3X線Talbot干渉計(a),X線Talbot-Lau干渉計(b),および,PS/PMMAブレンド試料の位相CT像(縦割り断面)(c)2 mmの円柱状にしたものである。相分離による共連続構造が明瞭に描出されている。X線位相CTは定量性に優れていることも特筆すべき特徴である。図2(a)の断層像について、白線上のプロファイルを図2(c)、およびヒストグラムを図2(d)に示した。試料は水で満たしたセルの中で撮影したので、水との屈折率差が定量計測されている。ヒストグラムのピークはPSとPMMAの相に対応しているが、純粋なPSおよびPMMAの値(矢印)より内側にずれている。すなわち、各相におけるPSとPMMAの混在比もこれから推算することができる。上記の方法ではSRを用いる必要があるが、実験室X線源でも稼働するTalbot干渉計、あるいはTalbot-Lau干渉計による位相CTも実現している。Talbot干渉計は、図3(a)に示すように2枚の透過格子を用いて、試料によるわずかなX線の屈折を可視化するものである。図1の位相板操作に対応する定量計測法の詳細は割愛するが、一方の格子を並進することにより果たされる3)。X線の空間的干渉性に対する要請から、Talbot干渉計には微小焦点X線源が用いられるが、より明るいX線源を用いて短時間で撮影したい場合には、空間分解能は犠牲にするが、一般的なX線源(通常焦点X線源)をマX線位相CTの空間分解能は、図1では結晶板の厚さ、図3(a)では格子の周期が制限しており、ともに10μm程度が実績である。当然この空間分解能の改善は必須であろう。そのための方策として、筆者らはX線Talbot干渉計とX線顕微鏡を融合させた(図4(a))3)。これにより、空間分解能は1μm程度となっており、図4(b)には、PS、PMMA、およびポリブタジエン(PB)の3成分ブレンド試料を観察した結果を示す。一方、時間分解能を付加する試みも行っている3)。これまでは、静的な状況下にある試料を観察してきており、継時的に変化する対象に対しては、図3(c)のように各時刻の構造を固定化した複数の試料を準備する以外になかった。しかし、相分離が起こる様子をそのまま三次元的に観察できれば、そのダイナミックスに関して得られる知見は多大であろう。筆者らは、X線Talbot干渉計が連続X線に対しても十分なコントラストを生成することに注目し、これを白色SRで動作させることに成功した。白色SRはきわめて明るいので、1秒以下のスキャン時間でX線位相CTが可能であり、さらに、位相CTの動画像撮影、言い換えれば四次元位相CTにも成功している。この技術を高分子ブレンド系の動的観察に適用するため、ブレンド試料を高温状態に保ちながらin situ位相CT撮影ができる装置を開発した。近い将来、三次元相分離構造の動画像を報告できるであろう。文献1)A.Momose,Jpn.J.Appl.Phys.,44,6355(2005)2)百生敦,藤井明子,機能材料, 25(8), 12(2005)3)百生敦,放射光, 23, 382(2010)676 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻11月号(2013年)