ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻11月号
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高分子 POLYMERS 62巻11月号
トピックスCOVER STORY: Topics and Products特集最新可視化技術で高分子を探るレジストパターンの形成過程を見てみよう井谷俊郎(株)EUVL基盤開発センター[305-8569]つくば市小野川16-1研究部長,博士(工学).専門は半導体リソグラフィ.toshiro.itani@eidec.co.jpwww.eidec.co.jp1.背景半導体デバイス分野の発展を下支えしている技術の一つが「リソグラフィ技術」である。これは、トランジスタや配線からなる多数の微細回路素子を加工するためのパターン作製を行う技術である。現在のリソグラフィ技術は、レジストと呼ばれる感光性素材を用い、光を使って回路となるパターンを焼き付けた後、写真のフィルムのように現像するフォトリソグラフィが主流となっている。このレジスト素材のベース(樹脂)には、ポリヒドロキシスチレン(PHS系)などの高分子化合物が利用されている。これらの高分子を使ったレジストで作られるパターンの線幅は、最先端の研究においては10 nm程度(ウイルスの約1/10)であり、高分子鎖数個にも満たないパターンを作れるまでに至った。しかし、このような微細なパターンが形成される際、レジストはどのような挙動を示すのであろうか。このレジストパターンの形成過程を見ることは、非常に興味深いことであり、かつ今後より微細なパターン形成を行う際に必要不可欠な情報である。2.レジストの溶解特性解析2.1従来手法とその問題点フォトリソグラフィによるレジストのパターン形成を行うには、さまざまな工程(図1)を経る必要があり、それぞれの工程に対して、膨大なノウハウが現在までに蓄積されている1)。その中でも、レジスト膜が実際に凹凸のパターンを形成する‘現像’の工程はレジレジスト溶液レジストパターン塗布ポストプロセスプリベークリンス露光現像図1レジストのパターン形成過程ポストベークストの解像性だけでなく、微細加工の精度に直結するLine Width Roughness(パターン線幅のばらつき指数:LWR)を左右すると考えられ、非常に重要な工程である。しかしながら、現像工程に関して、現在まではおもに露光された膜の溶解速度や、現像液の浸透性についての分析を行うに留まっており、レジストパターンの形成過程を実際に観察するという手法はなかった。そのため、レジストパターンの現像時の凹凸形成過程を可視化・解析することは、大変興味深く、またレジスト材料の評価、新規材料・プロセス開発の大きな手掛かりとなると考えられる。2.2液中・高速AFMさまざまな分野での利用が広がる原子間力顕微鏡(AFM)は、その原理から観察環境を選ばず、大気中や液中でも観察が可能な顕微鏡である。さらにその分解能は電子顕微鏡に匹敵する。また、このAFMの唯一のネックであったスキャンスピードも近年高速化が進み、リアルタイム観察が行えるような高速AFMも開発されるようになった2)。この高速AFMは、レジストのパターン形成過程のような、溶液中で起こるnmオーダーの反応観察を行える有効な手段である。しかし、現在市販されている高速AFMは、おもにDNAやタンパク質などの生体高分子の挙動を観察する目的で開発されており、必ずしもレジスト材料の観察に適しているとは言えない。このため、高速AFMを用いてレジスト溶解過程の観察を行うためには、いくつかの改良が必要となる。この高速AFMの改良や手法の改善を行うことにより、レジストの溶解過程をリアルタイム観察することに世界で初めて成功した3)。2.3レジストパターン形成過程のリアルタイム観察実際の評価としては、EUV小露光領域露光装置(SFET)でシリコンウェハー上のレジスト薄膜(50 nm厚)にパターン露光・ベーク処理を行った。その後、32 nm孤立ライン(I/L)に着目し、高速AFMにて水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)現像液中での現像過程をリアルタイム観察した。高速AFMを用いた観察手法については、手順を図2に示す。3種類のモデルレジスト樹脂(PHS系、メタクリル系およびPHSとメタクリルのハイブリッド系)を用い、高分子62巻11月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan679