ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻11月号

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概要

高分子 POLYMERS 62巻11月号

Front-Line Polymer Science高分子科学最近の進歩HONOHBO OB B Oヨウ素原子NNOHOB BO O BOB BO O BBO OB B OBO OB B O3.8 ANOHHONOHOB BO O BNNNH NN HNNCuNNH NN HNNNH NN HNNH NN HNNNH NN HNN CuNNH NN HNNNH NN HNNH NN HN20 nm 20 nm図2報告された金属表面合成二次元高分子えば、共役が発達した分子系ではないが、芳香環トリサリチルアルデヒドと1,6-ジアミノヘキサンの二成分をUHV中Au(111)上で蒸着させて表面重合させると、芳香環がジアミンでつながった二次元ネットワークを形成することを見いだしている8)。また類似系として、1,4-ベンゼンジボロン酸をUHV中Ag(111)上に蒸着重合させると、ボロネート由来の共有結合により繋がった二次元の有機格子を形成することを見いだしている9)。発達した共役系をもつ二次元高分子では、以下のような研究が報告されている。UHV中で、複数のピリジル基をもつポルフィリンと銅をAu(111)上に蒸着させ、銅原子がピリジル基に配位結合した一次元の金属-有機複合物質を作製した。ピリジル基の数と位置の制御により二次元高分子の形成に成功した10)。また、六回対称性をもつヘキサヨードヘキサ-m-フェニレンをAg(111)上にUHV中で蒸着・加熱することにより、六つのヨウ素が脱離し、シクロヘキサメタフェニレンどうしが結合して二次元ハニカム構造をもつ共役系高分子の形成に成功している11)。また、末端に複数のブロモ基をもつテトラフェニルポルフィリンをUHV下でAu(111)上に蒸着・加熱することでブロモ基が脱離しテトラフェニルポルフィリンどうしが結合し、ブロモ基の数や位置により一次元、二次元系の共役高分子を得ることを明らかにしている12)。3.電気化学エピタキシャル重合前節までに概観した報告例は、ほとんどがUHV中でモノマー分子を金属単結晶上に蒸着後、加熱して重合させる気相系合成法であるのに対し、電気化学法は液相中に溶解させた物質(モノマー分子)を外部印加電圧で反応させながら電極基板に堆積させる固液界面を反応場として用いるナノ構造構築法である。気相法に比べると、反応で生成するイオン種やラジカル種を溶媒図3異なる表面格子をもつヨウ素結合Au(111)表面に成長したポリチオフェン細線.ヨウ素原子の格子:(左)六方晶,(右)圧縮六方晶.和により安定化させる利点やさまざまな種類のモノマーが利用できる、またUHVなどの大型装置が不要で合成に要する時間が著しく短い等の液相系特有の利点がある。本稿では筆者らが開発した導電性高分子の単一分子細線を原料からボトムアップ的に金属表面上で重合させる新しい表面合成法、“電気化学エピタキシャル重合”について解説する13)。この手法はモノマーを含んだ電解質溶液中において、ヨウ素原子で表面修飾した原子平坦金属電極にパルス電圧を印加することにより、基板上の表面ヨウ素原子配列に沿ってモノマーの逐次的な電解重合を起こさせ、単一分子細線を形成させる原理に基づいている。この現象は(1)ヨウ素原子による電極表面修飾(結合)、(2)表面上での単一分子核(オリゴマー分子)の形成・埋込み、(3)モノマーによる核との表面重合反応の三つの素過程からなることが明らかになっている。たとえばモノマーと微量のヨウ素を含んだ電解質溶液に金(111)マイカ基板を浸し、振幅、時間幅、数を制御した電圧パルス(モノマーの酸化電位)を印加する。基板を液中から取り出し有機溶媒で洗浄した後、室温大気中でSTM観察を行った。通常の電解重合法(ヨウ素を含まずモノマーのみを含む系)ではポリチオフェンの束からなる不規則構造が見られるのに対し、モノマー・ヨウ素混合系では表面に規則正しく重合した、最長で約70 nmほどの直線型の単一ポリチオフェンが観測された。これはチオフェンモノマー(モノマー間隔、3.8A?)が約180個程度結合した長さに相当する。1本の細線を拡大するとチオフェン環に相当する交互に連なった3.8A?間隔の周期の点が確認できた。分子細線の長さと密度は印加した電圧パルスの数、電位、時間幅で制御できることがわかった。単一分子ワイヤーの長さと密度に及ぼす印加電圧パルス数依存性を検討した結果、印加電圧パルス数の増加にともない、平均の分子ワイヤー長が増長していくことがわかった。686 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻11月号(2013年)