ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻11月号
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高分子 POLYMERS 62巻11月号
MACRO経済MACRO Economy今後の高分子技術の動向を占います!湖沼の富栄養化を防げ国内総合化学各社家畜排せつ物を肥料に水嶋真人日刊工業新聞社2006年日刊工業新聞入社。情報通信、建設機械担当を経た後、2011年5月に石油化学担当記者に就任。総合化学大手がリンや家畜の排せつ物を肥料に再利用し、湖沼や海の富栄養化を防ぐ技術開発に乗り出しました。国内で生産する基礎化学品は割高な石油を輸入して製造するため、安いシェールガスをもつ米国、最新設備の建設が相次ぐ中国に比べて価格競争力が低く苦戦を強いられています。日本の化学産業が生き残るにはアジア新興国が真似できない高機能化学品を作ることが不可欠。人口増で負荷が高まる地球環境に貢献できる技術開発が、将来の日本の総合化学産業を支える成長源となりそうです。■霞ケ浦で実証試験旭化成ケミカルズは日本下水道事業団と、下水処理水に含まれるリンを吸着剤で回収して肥料に再利用する技術開発を進めています。使用するリン吸着剤は、セラミックスを主成分とする直径約0.55ミリメートルの粒。同剤を詰めた円筒状の容器(カラム)に下水処理水を流すことでリン酸塩を吸着する仕組み。ポリ塩化アルミニウム製の凝集剤を用いた従来法は、使用後の凝集剤を産業廃棄物として処分しなければなりませんでした。これに対し、吸着剤は繰り返し使用できる上、回収したリンも肥料として再利用できるため運営コストを1/5以下に減らせます。湖沼を富栄養化し、赤潮やアオコを生み出すリンの排出量を抑えるだけでなく、枯渇が懸念されるリン鉱石の使用も減らせる利点があります。茨城県土浦市の下水処理場「霞ケ浦浄化センター」で実証試験を1年間行った結果、処理水に含まれるリンを1リットル当たり1~2ミリグラムから平均で同0.03ミリグラムに減らせることを確認。国土交通省から計画放流水質に適合しているという評価を得たことで、国内で事業化できるようになったため、日本下水道事業団と共同で自治体からの採用を目指します。日本と同様に下水処理水の水質基準が厳しい米国と韓国でも2017年度をめどに、事業を始める計画です。*は、e!高分子のSupporting Informationにハイパーリンクされています。高分子62巻11月号(2013年)■UCLAに研究委託三菱ケミカルホールディングス(HD)傘下の研究機関である地球快適化インスティテュートは、植物由来の生分解性樹脂を生産する技術を応用して牛や豚など家畜の排せつ物から化学肥料を生産する研究を米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に委託する契約を結びました。家畜の飼育頭数は世界規模で増える見込み。堆肥化されずに廃棄される排せつ物も増えて湖沼や海の富栄養化が進む懸念が指摘されています。家畜の排せつ物から作った化学肥料で穀物を生産して家畜の飼料に用いる循環システムを確立し、持続可能社会の実現を目指します。委託した研究は牛や豚の排せつ物からタンパク質を抽出してアミノ酸に分解。さらに三菱ケミカルHD傘下の三菱化学がもつ植物由来の生分解性樹脂「GSプラ」の製造技術を応用して窒素肥料原料のアンモニアを生産する技術の実用化です。地球快適化インスティテュートは三菱ケミカルHDの小林喜光社長の肝いりで2009年に設立。20~50年先の人類が直面する問題への対応に焦点を当てた研究開発を手がけ、水不足に悩む豪州で節水型植物工場の実証も始めています。研究に着手したばかりでコスト面の克服などは今後の課題となりますが、こうした研究テーマが将来の日本の化学産業像のヒントになりそうです。KEIZAIワーズ家畜の飼育頭数(Breeding Population of Livestock)国連食糧農業機関(FAO)によると、2011年の世界の牛の飼育頭数は約14億頭。うち2億1000万頭をインド、約8300万頭を中国が占める。日本は約430万頭。豚は約9億6000万頭。うち中国が約4億7000万頭を占める。日本は約980万頭。今後、新興国の経済成長で牛や豚など家畜の飼育頭数は増加する見通し。堆肥化されない排せつ物の廃棄が増えれば、湖沼や海で藻の大発生をもたらして酸素不足による魚の大量死が発生しやすくなることが懸念される。c2013 The Society of Polymer Science, Japan689