ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻11月号
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高分子 POLYMERS 62巻11月号
PolySCHOLA測る3限目3.ガラス転移温度の測り方(その1):静的方法ゴム状態にある高分子の温度を下げると高分子は徐々に収縮します。ところが、ある温度を境に、高分子が動くために必要な“ゆとり”が急に減り、ついには数個の繰り返し単位程度の運動(セグメントレベルの運動)しかできなくなります3)。これがガラス転移現象で、この現象が起こる温度がガラス転移温度(T g)です4)。T g以下では急に分子の運動性が低下するので、膨張率もT gで急に変化します。したがって、測定試料の温度による体積変化(比容の温度依存性)からT gを測定することができます5)。この目的に用いられるのがディラトメーター(dilatometer、膨張計)と呼ばれる温度変化による体積変化を測定する装置です。これを用いて測定されたポリスチレンの比容の温度依存性を図1に示します6),7)。曲線の折れ曲がり点8)がT gに対応します。T gは数平均分子量に依存し、高分子量で一定値に漸近します。ディラトメーターを使うディラトメトリー9)は最も精度の高いT g測定法ですが、溶融しない架橋ゴムを測定容器にすきまなく詰めることが困難であることと、フィラー充填ゴムの中には気泡が混入しているため、このT g測定法はゴムにはあまり適しません。そこでよく用いられるのがDSC(示差走査熱量測定法、DifferentialScanning Calorimetry)です。DSCでは、測定する試料と基準物質が同じ温度になるように熱を加えます。基準物質には測定温度範囲にT gがないものを使います。上でも述べたように、T g前後で分子の運動性が変化します。試料と基準物質の温度を低温から上げていくと、試料は、T gを過ぎるところで分子運動が活発になるので、熱を吸収します。そのため、試料側と基準側の温度を同じにするためには試料側に余分に熱を供給する必要があります。余分に熱を加える温度からT gを求めます。これがDSCの測定原理です。DSC測定はフィルム状の試料を10 mg程度用意するだけで済むうえ、試料調製が容易で、さまざまな試料に適用できるため、広く利用されています。ゴムのDSC測定例として、未充填未架橋SBR、未充填架橋SBR、およびカーボンブラックを60 phr 10)充填した架橋SBRのDSC測定結果を図2に示します。図では吸熱方向を上向きに取っています。曲線が立ち上がる部分の中点がT gに対応します11)が、ちょっとわか図2未充填未架橋,未充填架橋,ならびにカーボンブラック(CB)充填架橋SBRのDSC曲線図1ポリスチレンの比容の温度依存性6)図3未充填未架橋,未充填架橋,ならびにCB充填架橋SBRのDSC積分曲線高分子62巻11月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan691