ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻11月号

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概要

高分子 POLYMERS 62巻11月号

PolySCHOLA測る3限目最後に充填剤を加える意味を考えましょう。図3、図4でわかるように、充填剤を加えてもT gは変化しません。では、何のために充填剤を加えるのでしょうか?答えは図4の一番上のパネルを見るとわかります。貯蔵弾性率G′の曲線を見ると、分子間架橋の導入により曲線が上がり、そこへカーボンブラックを加えるとG′曲線はさらに上昇します。これはゴムが丈夫になることを意味します。ゴムに充填剤を加えるのはゴムを補強するためなのです。充填剤を加えるもう一つの理由は冒頭に述べましたように耐摩耗性を上げることです。この点については文献2)を参照して下さい。5.さらに勉強したい人のためにガラス転移に対するいろいろな考え方があります。最もわかりやすいのは“自由体積”に基づく考え方で、文献6)を読むとよくわかります。基本的な概念やこれまでの研究については文献16,17)によくまとめられています。また、ガラス転移は速度論的制約で生じる非平衡転移であるとの考え方が主流を占めていると思われますが、ガラス転移を一種の熱力学相転移と見る考え方もあります。後者については、文献18,19)を読むとよいでしょう。文献と注釈1)芥川恵造,小澤洋一,山田浩,浜田達郎,日本ゴム協会誌, 77,394(2007)2)服部岩和,但木稔弘,日本ゴム協会誌, 80, 140(2007)3)これは“ミクロブラウン運動の凍結”と呼ばる.4)松重和美,船津和守,“高分子の熱物性”,高分子学会編,共立出版(1995)5)“高分子の物性(1)熱的・力学的性質(新高分子実験学8)”,高分子学会編,共立出版(1997)6)T. G. Fox Jr. and P. J. Flory, Appl. Phys., 21, 581(1950)7)五十野善信,塩見友雄,手塚育志,“高分子の分子量”,高分子学会編,共立出版(1992)8)正しくは,低温側と高温側の直線の交点.9)ディラトメーター以外にもいろいろな比容測定法が考案されている.詳細は文献5)を参照.10)phrはparts per hundred rubberの略で,ゴム分野でよく用いられる濃度単位.原料ゴム100 g当たりの配合資材の重量を示す.11)Tgより30度ほど高温まで昇温してから5分間保持後,一定速度で降温してから再昇温すると正常なシグナルが得られるが,ここでは1回スキャンしただけの測定結果を示す.JIS(K7123)に測定法とT g決定法の規定がある.12)J. Wu, S. Fujii, S, Kawahara, and Y. Isono, e-J. Soft Mater., 3, 41(2007)13)Y. Isono and T. Aoyama,日本レオロジー学会誌, 41, 137(2013)14)五十野善信,日本ゴム協会誌, 74, 212(2001)15)日本ゴム協会編集委員会,日本ゴム協会誌, 80, 25(2007)16)猿山靖夫,深尾浩次,熱測定, 35, 26(2008)17)深尾浩次,寺澤岳秀,織田勇斗,中村健二,田原大輔,日本レオロジー学会誌, 40, 121(2012)18)W. Kauzman, Chem. Rev., 43, 219(1948)19)J. H. Gibbs and E. A. Dimarzio, J. Chem. Phys., 28, 373(1958)五十野善信長岡技術科学大学工学部http://souran.nagaokaut.ac.jp/view?l=ja&u=77高分子62巻11月号(2013年)c2013 The Society of Polymer Science, Japan693