ブックタイトル高分子 POLYMERS 62巻11月号
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高分子 POLYMERS 62巻11月号
From My Bookshelf私の本棚から■是非、若手に読んでもらいたい本國武豊喜のおすすめ北九州産業学術推進機構理事長分野:一般書書籍名:ベスト&ブライテスト著者名:D.ハルバースタム著上、中、下浅野輔訳出版社:二玄社出版年:2007(1969)年価格:各1,700円この依頼を受けて改めて本棚を眺め、懐かしい本の数々を開いて思い出に浸ったりしました。記憶に残る科学関連の書籍はいろいろとあります。しかし、ここで敢えて紹介したいのは、2007年自動車事故で急逝したアメリカのジャーナリスト、DavidHalberstamが書いたノンフィクション“ベスト&ブライテスト”です。1960年に生まれたケネディ政権には、若くてアメリカで最も知的水準の高い(Best&Brightest)メンバーが揃っていました。当時東海岸にいた私も、そのころのアメリカ社会の高揚感を肌で感じていました。このノンフィクションは、そのケネディ政権がベトナム戦争の泥沼へはまっていく経過を、数多くのインタビューをもとにして、綿密に描き出した傑作です。Halberstamは本書をまとめるに至った経緯を「娘にあてた手紙」で述べています。アメリカで最良の資質をもつ人材が、何故、斯くも愚かな戦争へのめりこんでいったか、それを詳細に辿っていくのは故国を愛する人間として非常につらい仕事であった。しかし、目を背けたい愚行も、それが二度と起こらないように後世に伝えるのがプロフェッショナルとしての務めである、どうかこの愚行を忘れないでほしい、と。このようなプロの使命感は、研究に携わる人間にとっても同様に大切なものです。それは研究の傑作を生み出す駆動力となるからです。蛇足ですが、このカラムのペアとなる國武雅司教授とは、地縁、学縁はありますが戸籍上の関係はありません。認知していないということでもありません。■私の役に立った本國武雅司のおすすめ熊本大学大学院自然科学研究科教授分野:機能性高分子・工学書籍名:産業を支える機能性フィルム著者名:機能性フィルム研究会編出版社:機能性フィルム研究会出版年:2013年価格:2,940円子供の頃、科学技術大好きSF少年でした。SFとは思考実験であり、妄想することこそが醍醐味です。今でも分野を問わず、斬新なサイエンスを見るとワクワク妄想してしまいます。工学技術、製品化を目指した企業での材料開発も同様です。紹介する本は、異業種企業が集った研究会が、さまざまな機能性フィルムについて、構造や要求性能から最新の市場動向まで幅広くまとめたもので、開発当事者の方々の強い思いを感じる本です。電子機器が加速的に進化する影で、そこで使われる高分子材料も高度に発展しており、その多様さに改めて感心します。さまざまな制約の中、複数の特性を同時に満たす材料の開発は、一つの特性だけが突出した材料の開発よりも高度です。エポックメーキングを目指す基礎研究とは異なる燻銀な深みをもっています。求められる機能・特性をどのような構造で達成するのか?またその構造をどのように構築するのか?今後どう発展するのか?高分子を専門としていてもわからないことだらけです。鉄道マニアが時刻表を眺めて愉しむように、書かれていない技術の裏や未来を読み解こうと愉しんでいます。基礎研究と開発は(本当はSFも)、本来地続きであるはずです。教科書的な理論や概念が、製品にどのようにつながっているのか考えるのもパズルを解くように面白いものです。本企画担当のひとりとしてご紹介いただく本の枠を広げたいと思い、工学的な本を紹介しました。企業研究者を目指す学生さんにもお薦めします。今後も本企画をご贔屓に。694 c2013 The Society of Polymer Science, Japan高分子62巻11月号(2013年)