ポリワーズ E 

ポリワーズ

〔E〕


EPR効果
Enhanced Permeability and Retention effectの略で,高分子が本質的にがん組織に選択的に集積することを意味する。がん組織では微細な血管を構成している血管内皮細胞層の高分子物質に対する透過性が異常に亢進していると同時に,リンパ系の経路を通した高分子のがん組織からの排出が抑制されているために,高分子(天然・合成を問わず)ががん組織に選択的に集積する。このEPR効果は,1986年に前田,松村によって提唱された1)。この原理の重要性は,固形がんへのターゲティングを達成するためには,抗体のようながん細胞・組織への特的相互作用するリガンドが必要ないことである。また,がん細胞へのターゲティングではなく,がん組織(がん細胞,細胞外マトリクス,間質を含んだもの)に対するターゲティングであることに注意が必要である。EPR効果は,高分子ミセルに限らずに,リポソームや高分子ミセルなどのナノサイズの薬物キャリヤーシステムの固形がんへのターゲティングにも適用されるので,現在,固形がんへのパッシブ(受動的)ターゲティングの原理として広く応用されている。 1)Y. Matsumura and H. Maeda, Cancer Res., 46, 6387(1986) Vol.58, P.469