ポリワーズ M 

ポリワーズ

〔M〕


Miscibility Valley(相溶の谷)現象<p589>
いまホモポリマー(A)nとランダム共重合体(CyD1-y)nの2成分混合系における分子間相互作用パラメータχblendをセグメント間χパラメータ,χijを用いて表すと次のようになる。  χblend = yχAC十(1-y)χAD-y(1-y)χCD yはセグメント分率(体積分率)で表された共重合組成を示す。この式はすべてのセグメント聞χijが正であっても,χCDがχACおよびχADより充分大きければχblendがきわめて小さくなるか負になる共重合組成が存在しうることを示す。いま臨界値をχcritとおくと次式  f(y) = χblend-χcrit = y2χCD+y(χAC-χAD-χCD)+χAD-χcrit においてf(y)<0となれば系は相溶しうることを示す。χCDが大きいということは共重合体の構成セグメントC-D間の斥力が充分大きいということである。このようなケースにおいて実験的に2成分系がLCST形相図を示す場合とUCSTを示す場合が見い出されている。特にLCST形の場合ブレンド比を一定にしたとき,共重合組成を温度に対しその相溶性を 調べるとその境界線は上に凸の形で内側が相溶域となり, その形から“Miscibility Window” と名付けられている。一方,UCST形の場合はちょうどこれとは対称的な下に凸の形となり,内側が相溶域となる。これは現象的にいわば谷の形である。このような相溶性の温度と共重合組成依存性に発現する現象を‘‘Miscibility Valley”と名付けた[Polymer,32,1673(1991)].  なお,“Miscibility Window” の方は定温でf(y)関数が負となる共重合組成領域を指してもよく使われる。 Kobunshi, Vol.41, p.594 (1992)

MID<p329>
Molded Interconection Deviceを略したもので,いま電子部品分野で注目されている立体回路成形品の呼称であり,樹脂成形品にメッキを施す立体配線技術や2重成形技術などの革新的な技術を用いて作る電子部品や回路化したハウジングなどを指す。回路の形成方法には2通りあり,線幅200μm以下の高密度配線を特徴とする射出成形品に配線パターンを立体的に形成する1ショット法,メッキ可能な樹脂とメッキの付かない樹脂との2重成形により白由度の高い立体回路を形成する2ショット法とを各々用途に応じて使い分けることができる。このMIDを用いると,樹脂メッキによりリードフレーム,端子などの金属部品が省賂でき, 高集積化が図れるので信頼性や機能性の向上とコストダウンが可能となる。MIDの材料にはメッキ加工性,ハンダ耐熱性,低線膨張係数,薄肉高流動性などが必要とされ,これらの特性を持つ液晶ポリマーの出現で初めて実用化が可能となった。MIDは既に移動通信機の発信回路やLED,センサー類に使用されており,この他にも多 様な電子部品への応用が考えられている。 Kobunshi, Vol.42 , p.330 (1993)

Miscibility Window<p356>
ランダムコポリマーを含む相溶性アロイの中で,相図がLCST型を示すものに現れる。これは,横軸にコポリマー組成を縦軸に温度をとって,各組成が示すLCST温度を結ぶ曲線を描く。曲線の上側が相分離域を,下側がー相域を示すことになる。Miscibleな領域は,最適組成に頂点をもつ上に凸なカーブを示すことになる。その形が西洋館の窓の形状に似ていて,Miscibleなところが,窓の部分に当たるところから,こう呼ばれている。  最初の報告は,o一クロルスチレンとp-クロルスチスチレンとのランダムコポリマーとPPEとのアロイ1)に関するものであった。その後、D.R.Paulらによって,コポリマーの備えるべき条件などMiscibility Window形成を広く取り扱った理論的なレポート2)が提出され,一般的にこの名称が用いられるようになった。 1)P.Alexandrovich,F.E.Karasz,W.J.MacKnight:Polymer, 18,1022(1977) 2)D,R.Paul,J.W.Barlow: Polymer,25,487(1984) Kobunshi, Vol.43 , p.369 (1994)