ポリワーズ ら行 

ポリワーズ

〔ら行〕

ラセンみみずモデル
溶液中で自由に屈曲するやわらかいランダムコイルと剛直な棒状分子との中間的な形状をとる高分子は半屈曲性高分子と呼ばれる。このような剛い鎖(stiff chain)を表わすために導入されたものがラセンみみずモデル(HW鎖)である。これは繰返し単位の化学構造を忠実に取り入れた回転異性体モデルを粗視化した連続空間曲線モデルであり,持続長qと全長Lおよび経路長を用いて記述される。流体力学的性質は空間曲線に断面の大きさを加える。このモデルの特微はコイルと棒の両極限への性質を持ったみみず鎖モデルに,さらにらせん部分の存在を考盧した点にある。DNA,セルロース誘導体,ポリイソシアネートなどの剛い鎖はみみず鎖で表わせるが,HW鎖はさらにらせんの性質をもつとされるアミロース,DL-アラニンの分子サイズの極限粘度を予側することに成功した。排除体積効率が無視できる場合に限られるが,ほぼ全ての実際の分子に適用できることが判っている。屈曲鎖モデルにおける有効結合長さ(クーン鎖長)を持続長のnとすれば,HW鎖とクーン鎖を対応づけることができる。 Kobunshi, Vol.42 , p.986 (1993)

ラビング<p281>
TN,STN-LCD等液晶ディスプレイの多くはサンドウィッチセルの形をとる(本文282頁図1)。そのセルの2枚の基板はガラスまたはプラスチックフィルムに透明導電膜を付け,さらにその上を配向膜(最もよく用いられている膜材料はポリイミド)を塗布する。  このポリイミド等高分子配向膜をナイロン等の布でー方向に“こする”,これがラビング加工処理である。このラビングにより,高分子の表面に深さ10~20nmの領域に加工層が生じる。そこで生じるのはラビング方向に発生する溝(こすりきず)と屈折率の異方性である,この異方性の光軸はポリイミドではラビング方向に平行,ポリスチレンでは直交している。  ラビングによる液晶分子の一方向性の配向の機構として,溝にそって棒状分子が並ぶという説と異方的分散力による説明とがある。ポリイミドでは両者は平行に協力して作用し,ポリスチレンでは異方的分散力による機構の方が優勢となる。 Kobunshi, Vol.43 , p.295 (1994)

リアクティブプロセッシング<p687>
(Reactive Processing) 二軸押出機に代表される混練機を化学反応装置として用い,重合,改質などを連続的に行うポリマー合成技術。従来の大型反応装置に比べ,1)モノマー類から高分子量のポリマーまで幅広い粘度範囲のものを無溶剤で処理することが可能 2)スクリュー構成,L/D,回転数の調節により混合状態,反応時間を容易に制御可能であり,またセルフクリーニング効果により均質な反応生成物が得られる 3)内容量に比べ表面積が大きいため熱交換が良好であり,反応温度の制御が容易 4)揮発分の脱気,添加剤,充てん材の添加,造粒,成形加工などのプロセスを組み込み一元化することが可能 5)設備費が比較的少なくてすみ,少量生産方式として経済的,などの特長がある。 エ業的には,酸変性ポリオレフィン,高衝撃ナイロンなどの各種ポリマーアロイの製造,動的加硫によるオレフィン系エラストマーの製造などに利用されている。また,重合反応についても研究が行われており, 重合から成形加工までのプロセス一元化など,さまざまな応用展開が期待されている。 Kobunshi, Vol.40 , p.692 (1991)

リオゲル<p552>
高分子ゲルは,鎖状分子またはその集合体が多量の溶媒中にネットワークを形成している状態であり,系全体にわたる安定な架橋支持構造のためにその形状を継続的に保持しうる。ゲルは網目を構成している高分子成分(分散質)やそれをとり巻く媒体(分散媒)の種類によって分類できる。例えば,食用のゼラチンや豆腐は蛋白質が,ナタデココや寒天は多糖が,それぞれ三次元網目を構築して多量の水に膨潤した天然ゲルであり,これらは特に水を分散媒としているのでヒドロゲル(hydrogel)の範疇に入る。一方,合成ゲルの一種であるシリコーンゲルや炭化水素系溶媒に浸漬膨潤させた加硫ゴムのように,分散質の網目中に有機溶媒を含んだゲルをオルガノゲル(organogel)という。ヒドロゲルやオルガノゲルのように,分散媒が液体であるゲルを総じてリオゲル(lyogel)と称し,これは,気体を分散媒としたエアロゲル(aerogel)に相対する呼称である。なお,リオゲルを強制的に(収縮)乾燥させて得られる多孔質のゲルはキセロゲル(xerogel)と呼ばれる。ゲルは,古くて新しい,魅力に富む研究対象である。 Kobunshi, Vol.43 , p.558 (1994)

リサイクル法<p244>
平成3年(’91年)4月26日に,通産省から「再生資源の利用に関する法律」(7章28条)が制定され,同じく10月18目に法律が実行された。この法律がいわゆる「リサイクル法」と呼ばれているものである。このリサイクル法と共に車の両輪となっているのが,厚生省から出された「廃棄物の処理および清掃に関する法律」の改正であり,平成4年(’92年)7月に施行された。この二つの法律の目的は,①資源の有効利用と,②廃棄物の抑制にある。リサイクル法では,資源再利用を推進するために,第1種指定製品として,家電4製品(電気冷蔵庫,電気洗濯機,テレビおよびエアコン)と自動車が指定された。指定された製品は,廃棄後の再資源化を目指すために,①製品の開発時に事前評価を行うこと,②樹脂部品の材質表示,など義務付けが行われることになった。 他に,第2種指定製品(表示に対する義務付け)として,缶類に対し鋼製,アルミ製の区別表示が必要となった。また,特定業種として,①紙製造業,②ガラス容器製造業,ならびに③建設業(年間施工高50億円以上)などによる。古紙,カレット,土砂コンクリート塊の再利用努力が必要となる。 Kobunshi, Vol.42 , p.256 (1993)

レーザーラマン<p334>
振動数v0の光を物質に照射すると,入射光と同じv0の振動数をもつ強い散乱光(レイリー散乱)のほかに,異なった振動数(v0±⊿v)の弱い散乱光が観察される。これがラマン散乱である。物質に固有の振動数をもつことより,材料の評価手法として積極的に用いられるようになった。光源としてレーザーを用いることにより測定精度が飛躍的に向上し,現在ではArレーザーが最もよく用いられている(主な発振線:4579Å,4765Å,4880Å,5145Å)。最近の動向として長波長のレーザ-(半導体レーザー,YAGレーザーなど)や,より短波長のレーザー(He-Cdなど)が励起光源として注目され,FTレーザーラマン装置も開発されている。光学顕微鏡を設置したものが顕微ラマン分光装置であり,対物レンズによってビーム径を約1μmまで絞ることができ,局所分析が可能となる。本稿では,炭素繊維のラマン振動数が繊維に与えた歪によってシフトする現象に注目したものであり,このラマン振動数のシフトはグラファイト結晶の変形による格子振動数の変化に基づくものである。 Kobunshi, Vol.41 , p.350 (1992)