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S18.フォトクロミズムと新機能
(名古屋大学大学院工学研究科)関 隆広
<趣旨>
 有機フォトクロミズムに関連した研究は古くから現在に至るまで、光化学や光機能材料の研究分野にて常に国内外にて重要な課題であり続けてきた。時代とともに新たなフォトクロミック系が見出され、それぞれに特徴的な用途が探索されてきた。一口にフォトクロミズムの研究といってもその内容と期待は時代とともに変遷しているが、1950年代半のHirshbergによるスピロピランのフォトクロミズムの発見とともに提案された可逆的光メモリへの応用、および調光材料としての応用へ向けた研究がこれまでの当分野の発展を牽引してきた。
 しかし、メモリ機能は可逆的な光吸収波長変化というフォトクロミック分子がもつ部分的な機能にのみ着目したものに過ぎず、フォトクロミック分子郡は、分子形状、極性、屈折率、酸化還元特性、電子物性等の諸特性の可逆的変化等を利用する幅広い学問・技術分野などへの幅広い展開への可能性が多く残されている。今後の展開には、フォトクロミック分子の新たな設計とともに、液晶、結晶、界面組織化等の場の設計、さらには高分子化学との巧みな融合が重要な鍵を握る。ここ数年で、光アクチュエーション、光誘起物質移動、表面物制や形態の光制御、分子や材料の可逆的な光配向制御や構造制御、各種(物理的・化学的・生物的)機能のスイッチング、新規光パターニングプロセスの開発などにおいて新たな展開が急激に進展し、フォトクロミズム研究に新たな新天地が拓かれつつある。高分子物質はこの分野において極めて重要な役割を演じてきたし、その重要性はますます高まるであろう。
 日本はフォトクロミズム研究を先導する立場にある。従来からの“フォトクロミズム=光メモリ”の固定的な考え方を払拭し、この時節を捉えて特別セッションを企画し、フォトクロミズムの持つ新たな可能性と方向性を探る一助としたい。
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