S7.高分子複合系におけるヘテロナノ界面の科学-構造制御と機能発現-
(東北大学多元物質科学研究所)及川 英俊
(名古屋工業大学大学院工学研究科)猪股 克弘
<趣旨>
 広範な高分子複合系材料の中にあって,様々なドメインサイズレベルでの高分子-無機(金属,半導体,セラミックス)複合材料が知られている.高分子と無機材質が接触するヘテロ界面の構造や性質は,そのドメインの分散状態を支配し,複合材料全体の物性と機能を決定付ける最も重要な因子である.高分子ブレンド・アロイも広義のヘテロ界面を形成する系と見なせるが,本来全く属性の異なる高分子材料と無機材質が形成するヘテロ界面は本質的に異なる.近年の高分子ナノコンポジットの例にも見られるように,新規な物性やさらなる有用な機能発現に向けて,無機材質(基板)表面における高分子鎖の吸着挙動,高分子マトリクス中での無機ドメイン構造形成・分散状態の制御が,今後,益々ナノオーダーで求められるのは必至であり,そのためにはナノレベルでのヘテロ界面,つまり「ヘテロナノ界面」の精緻な基礎的研究が必要不可欠である.取り分け,高分子-無機複合ナノ粒子系のように全体のサイズがナノレベルである場合は特に重要となる.
 ヘテロナノ界面における中間・界面層の形成や準安定構造・非平衡構造,緩和過程を含む動的性質と界面相互作用,ナノドメインの分散安定性とドメイン間相互作用,さらには界面分極などの電子的相互作用など,未解明な部分が多々あるのが現状である.高分子-無機複合系の材料設計指針を提案するためにも,ヘテロナノ界面の構造制御とその基礎物性・機能発現の相関関係に興味が持たれる.高分子科学をベースとしながらも,無機材質という異種材料に対する充分な理解も同時に求められる.
 以上のように本特定テーマでは,「ヘテロナノ界面」をキーワードとして,高分子-無機複合系におけるドメイン構造形成・分散状態の制御とその解析,界面相互作用の評価,物性・機能発現に関する研究分野に興味を持つ研究者が一同に会して,新機能創成に繋がる高分子-無機複合材料に関する活発な討論を行いたいと考えております.
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