S3.元素ハイブリッドの創製と機能
(早稲田大学理工学術院)菅原 義之
<趣旨>
 有機-無機ハイブリッドは、有機化合物と無機化合物それぞれの特徴を併せ持つ次世代材料として広く期待を集めている。これらのハイブリッド化には、多様な合成戦略が適用される。例えば、有機ポリマーに無機ビルディングブロックを分散させる、金属アルコキシドの加水分解・重縮合を利用して有機ポリマー共存下で無機骨格を形成させる、無機化合物をベースとする多孔体や層状物質などの制限された空間に有機ポリマーや有機分子を取り込ませる、などの手法を用いて、様々なタイプの有機-無機ハイブリッドを創出できる。
 有機-無機ハイブリッドの最大の特徴は、有機、無機に限定されることなく周期表の全元素を対象として、元素特有の性質を利用した分子設計・機能設計ができることにある。元素はそれぞれ固有の電子構造を有しているため、元素によって結合様式や化学的性質が異なり、また、元素に固有の電気特性や発光特性などの様々な物理的性質を示す。したがって、有機-無機ハイブリッドにおける元素の役割に着目し材料設計に活かすことで、有機-無機ハイブリッドの高度な未来材料への展開が期待できる。
 有機-無機ハイブリッドの機能性有機成分として、多様な炭素系有機高分子に加えて、シロキサン結合など様々な元素間の結合を有する無機高分子や主鎖骨格や側鎖にヘテロ原子を組み込んだ有機ポリマーが利用されている。一方、機能性無機ビルディングブロックとして、2次元ナノシート、1次元ナノファイバー・ナノチューブ、0次元ナノ粒子などの多彩な元素より構成されるナノ構造体を用いることができる。また、多孔体や層状物質を利用した制限された空間に機能性有機分子や有機ポリマーを閉じ込めることにより、単体では達成できなかった機能性や耐久性の発現、物性や反応性の制御も期待できる。
 本特定テーマでは、典型元素や遷移金属元素などの様々な元素の固有な電子構造から導かれる化学的・物理的性質を活用した有機-無機ハイブリッドを「元素ハイブリッド」と位置づけ、高分子材料、無機材料、複合材料分野の研究者が会して、特に元素の役割を意識した観点から新規な有機-無機ハイブリッド材料の創製につながる討論をしたいと考えています。
 是非、この分野で活発な研究を展開されている貴方に、次のような特定テーマ分野で研究成果を発表し、討論に参加していただきますようお願い申し上げます。  
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