S11.元素ハイブリッド高分子
(北海道大学大学院工学研究科)米澤 徹
<趣旨>
  有機-無機ハイブリッドは、人間のコントロールできるフレキシブルな材料として、有機化合物と無機化合物それぞれの特徴の双方を併せ持たせることができる以上に、さらに新しい材料システムを構築できる可能性をもとめて研究されている。しかし、その二つの異種化合物の混合は、個々の物質が微細になるほど格段に困難となり、多様な合成戦略が必要とされる。特に、微細材料をその微細さをキープしながら、かつその位置を均一にしながら異種材料の中に分散させることはまだ十分に達成されていない。これまで、有機-無機ハイブリッドの作製には多くの手法、例えば、有機ポリマーに無機ビルディングブロックを分散させる、金属アルコキシドの加水分解・重縮合を利用して有機ポリマー共存下で無機骨格を形成させるというような合成的な手法に加え、無機化合物をベースとする多孔体や層状物質などの制限された空間に有機ポリマーや有機分子を取り込ませるなどの物理化学的な手法も提案されてきているが、さらに新手法の登場も期待されている。
 しかしながら、有機-無機ハイブリッドは、有機、無機に限定されることなく周期表の全元素を対象としており、それぞれの元素特有の性質を利用した分子および材料設計・物性設計・機能設計ができることが最大のメリットである。もちろんのことであるが、それぞれの元素はそれに固有な電子構造をもっているため、結合様式や物理的、化学的性質が異なっている。したがって、有機-無機ハイブリッドにおける個々の元素の性質・状態に着目し、目的にあった物性をハイブリッド材料中の適切な位置に配置するという設計指針を作り展開することで、有機-無機ハイブリッドをさらに高度な未来材料へと昇華できる。
 有機-無機ハイブリッドの機能性有機成分として、従来からの多様な炭素系有機高分子のみならず、シロキサン結合など様々な元素間の結合を有する無機高分子や主鎖骨格や側鎖にヘテロ原子を組み込んだ有機ポリマーの利用が盛んとなっている。一方、機能性無機ビルディングブロックとして、2次元ナノシート、1次元ナノファイバー・ナノチューブ、0次元ナノ粒子などの多彩な元素より構成されるナノ構造体をハイブリッド化することで、単体では達成できない新しい機能や高度な耐久性の発現、物性や反応性の制御も期待できる。
 本特定テーマは、新規概念である「元素ハイブリッド高分子」である。これは高分子系を基軸とした典型元素や遷移金属元素などの様々な元素の固有な電子構造から導かれる化学的・物理的性質を活用した有機-無機ハイブリッドである。この概念のもとに、高分子、無機材料、複合材料分野の研究者が会して、特に元素の役割・性質を意識した観点から新規な有機-無機ハイブリッド材料の創製につながる討論をしたい。
 是非、この分野で活発な研究を展開されている貴方に、次のような特定テーマ分野で研究成果を発表し、討論に参加していただきますようお願い申し上げます。
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