S5.逐次重合の新展開 |
(名古屋工業大学大学院工学研究科)高須 昭則 |
<趣旨> 高度に発展した連鎖重合と比較すると逐次重合は新展開すべく多くの課題を残したままである。逐次重合で合成される高分子は機能性バルク材料として利用されることが多いが、高分子量体の生成には時間がかかる。よって高分子量体を合成するための縮合剤や触媒(酵素を含む)および反応場の開発は依然重要視されている。様々な有機化学反応が開発され、環境に配慮した逐次重合プロセスの確立やより精密な縮合系高分子合成法が可能になってきた。例えば、低毒性の触媒、低温重合、マイクロ波加熱、化学選択的重合、位置選択的重合、立体選択的重合が開発されるようになった。特に、既知の有機反応を重合化学の観点から精査すると、連鎖重縮合による分子量と分子量分布の制御、非等モル条件下における高分子量縮合系高分子の合成、動的共有結合を有する高分子の合成、およびラジカル重付加によるシーケンスの制御されたビニルポリマーの合成なども可能になった。 縮合重合はポリアミドやポリエステル合成のような炭素-ヘテロ原子の結合生成だけではなく、鈴木・宮浦カップリングに代表されるような高効率炭素-炭素結合生成カップリング反応によってπ共役高分子も合成されている。精密に機能設計された種々の芳香族化合物の逐次重合によって生成するπ共役高分子は、バルク材料ではない、高付加価値の有機エレクトロニクス材料として既に実用化されたものもある。 逐次重合に応用可能な新たな有機反応の一つにクリック反応が挙げられる。最近の発展に伴いいくつかの重付加反応に応用されるようになった。温和な条件下で高分子量体が得られるのみならず、ヘテロ原子や複素環が高分子主鎖中に導入でき、新たな性質や物性が見いだされている。また、低炭素化社会の構築を背景にバイオマス資源をモノマーに用いた重合も可能になった。 物質の高度な機能は、単一バルク材料の無秩序な構造からは生まれない。高分子集合体のモルフォロジー制御を伴う逐次重合法も開発されているが、近年の多彩な高分子合成法の進歩、AFMをはじめとする解析評価技術の発達などにより、上述のような共通意識のもとに高分子化学の粋を集め、次世代の高分子の化学を展開する素地が形成されつつある。 工業的には、繊維、トナー、粘着剤、エマルション、光・電子材料への応用が検討され、工業化に至っているものもある。以上のように、本特定テーマでは、「次世代の逐次重合」をキーワードとして、重合系の設計・開発、高分子合成・構造・機能・物性、応用、工業化といった幅広い分野からの研究者が介して議論することで、今後の高分子化学の発展に結びつけたいと考えています。 是非、この分野で活発な研究を展開されている貴方に、次のような特定テーマ分野で研究成果を発表し、討論に参加していただきますようお願い申し上げます。 |
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