S4.キラル高分子・キラル超分子の合成と機能
(新潟大学大学院自然科学研究科)青木 俊樹
<趣旨>
 現在の生活に汎用的に使われている構造材料から、種々の高機能な機能性材料までの広範囲の材料の素材として、巨大分子の分子集合体である高分子材料は広く用いられている。また、最近、低分子の分子集合体から成る超分子や超分子ポリマーが、新たな高機能材料の素材として注目されている。
 核酸や多糖、タンパク質などの生体高分子は、言うまでも無く、合成高分子の及ばない、極めて高い機能-生体内での分子認識や触媒作用、情報伝達、エネルギー変換など-を有している。その原因は、これらの高分子の一次構造の厳密性とそれに起因した高分子の分子集合構造の高い規則性であると考えられる。特にこれらの高機能な生体高分子のほとんどが厳密に制御されたキラリティーを有している。たとえば、高分子主鎖中の不斉炭素によるキラリティー(1次構造)や高分子主鎖の片巻きらせん構造(2 次構造)、組織化された超分子構造(高次構造)などの各階層構造においてキラリティーが制御されている。すなわち、キラルな生体高分子とその超分子によって高選択的で高効率的な生体システムが構築され、生命活動が維持されている。
 このような生体高分子の例にインスパイアされ、巨大分子の分子集合体である合成高分子材料においても、各階層構造におけるキラリティーの重要性が広く認識されている。さらに最近では低分子の分子集合体から成る超分子や超分子ポリマーにおいても、キラリティーの重要性が広く意識されている。特に、近年の精密重合技術の大きな進歩とナノレベルでの分析技術の飛躍的な発展に伴い、キラル高分子の精密な構造制御やキラル超分子の詳細な構造解析が可能となってきている。それらの高い分子認識能や触媒能を利用した分離材料、不斉触媒などが検討され、一部はすでに実用化されている。しかし、生体高分子に匹敵する高選択的・高効率なシステムの構築を実現するには、キラル高分子・超分子の合目的的な合成・構造制御法の開発、キラルなコンフィギュレーションおよびコンホメーションと機能・物性との相関関係などの解明すべき課題が多く残されている。
 本特定テーマでは、キラル高分子・キラル超分子あるいは、一次構造から高次構造までのキラル制御に関連するあらゆる分野の研究者が一堂に会して、それらの合成、反応、構造、理論、機能、物性、応用などの様々な観点から総合的な討論を行うことを通じて、大きなブレークスルーにつながることを期待している。
 是非、この分野で活発な研究を展開されている貴方に、次のような特定テーマ分野で研究成果を発表し、討論に参加していただきますようお願い申し上げます。
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