S18.生体分子科学を基盤とするソフトマテリアル
(慶應義塾大学理工学部)佐藤 智典
<趣旨>
 細胞や組織に存在している核酸・タンパク質・糖質・脂質などを始めとする生体分子は、細胞機能の維持や再生に大きく関わっていることが知られています。また、それらの分子の変異や構造異常が、多くの疾病の原因となっている例も多く知られるようになってきました。近年のRNA干渉、細胞のリプログラミングあるいは再生医療などの発展は、ライフサイエンスイノベーションの原動力となっています。また、ゲノム、プロテオーム、グライコームあるいはメタボローム解析技術の進歩に伴い、生体機能や疾病に関わる生体分子の配列や高次構造あるいは分子間相互作用の解析などの分子科学基盤も急速に進展してきました。特に、質量分析や次世代シーケンサーなどに代表されるような最先端の分析技術の進歩はハイスループットで網羅的な解析への期待を高めています。そのようにして明らかにされて来た構造情報を基盤とすることで、生体分子の設計や機能評価にも新たな概念や技術開発が求められるようになってきました。このようにして、生体分子の生命機能制御に関わる研究基盤は急速かつ大きな変化を遂げてきています。
 核酸、タンパク質、ペプチド、糖鎖および脂質などの生体分子の設計は、生体分子の機能発現解析に直接的に影響するため生命科学の発展にとって重要な要素となっています。機能改変のための修飾技術や新機能探索のためのライブリーの作製は、巧妙な設計に加えて、効率的かつ簡便な手法が求められる様になってきました。そのために、化学的な手法に加えて、生物機能を活用した手法も大きな発展を遂げています。あるいは、生体分子間の相互作用を選択的かつ高感度に検出するための分子環境のデザインも重要な要素となっています。この様にして開発されてきたソフトマテリアルは、生体とのインターフェイスとして、あるいは細胞内で機能を発現することで、生命科学の革新に寄与する事が期待されています。さらには、生体反応の分子メカニズムに立脚して設計されたソフトマテリアルは、細胞機能の評価や制御、疾病の診断や治療といった分野での展開が期待されています。
 本セッションでは、生体分子の機能を解明するための新しい手法や技術基盤の開発、さらには、そのような機能解明により得られる生命科学の知見を基にした生体機能を制御するためのソフトマテリアルの開発について議論する場としたいと思います。
 是非、この分野で活発な研究を展開されている先生方に上記の観点で研究成果を発表し、討論に参加していただきますようお願いし申し上げます。
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