| S20.バイオベースポリマー開発の現状と将来 |
| (京都工芸繊維大学工芸科学研究科)山根 秀樹 |
| <趣旨> 発酵合成によりバイオマスを有用な有機化合物、モノマー、あるいはポリマーに変換し、さらにバイオマス由来モノマーを化学的にポリマーへ変換することにより新規なバイオベースポリマー(バイオマスポリマー)が開発されている。このようなバイオと化学との融合技術(ケモ−バイオテクノロジー)により再生産可能資源から得られる材料は持続性材料(sustainable materials)として環境保全、省資源の観点から期待されており、さらなる高性能化、高機能化に関する研究が進められている。 このようなプロセスにより得られるポリマーの多くが生分解性を示すことより、従来この生分解性が最も重要な機能であるとみなされ、これにより環境保全を達成する試みがなされてきた。このような材料は一時的な使用にとどまり、廃棄時の分解性が期待されていたため、高性能、高機能は要求されておらず、耐久性は全く考慮されていなかった。しかしながら、現在ではむしろ出発材料を非化石資源であるバイオマスに求めることが最も重要なファクターであるとされ、バイオベースポリマーにも既存の一般高分子材料に期待されてきた多くの特性が要求されている。また、生分解性は一部の農業資材および医療デバイスを対象とした素材で活用され、有用な機能の一つとみなされるようになっている。このような背景から、新たなモノマー、ポリマー合成技術の開発により、より効率的な生産が期待されるのみならず、既存の合成ポリマー材料を凌駕する高性能、高機能、耐久性が期待されている。 以上述べたように、バイオベースポリマーに関する研究は、バイオマスの選定、バイオリファイナリーによるバイオマス由来有用有機化合物やモノマーの合成、さらに化学変換によるポリマーへの変換、バイオベースポリマーの高性能・高機能化、成形加工に至るまで多岐にわたっている。本特定テーマでは、「バイオベースポリマー開発の現状と将来」をキーワードとして、モノマー合成からバイオベースポリマーの物性制御、高性能材料への加工まで広範な研究分野に興味を持つ研究者が会して、バイオベースポリマーの現状と可能性についての討論を通じ、高性能バイオベースポリマーの創製につながる意見交換がなされることを期待している。 |
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