S3.キラル高分子・超分子の創製と機能開拓 |
(金沢大学大学院自然科学研究科)前田 勝浩 |
<趣旨> 核酸や多糖、タンパク質などの生体高分子は、自然が長い年月をかけて創製した究極のキラル高分子であり、厳密に制御されたキラル構造を有している。生体高分子は、構成単位である糖やアミノ酸などの不斉炭素に由来するキラリティーだけでなく、らせん構造に代表される二次構造や、さらにそれらが規則的に集積して超分子集合体を形成することによって誘起される高次構造に由来するキラリティーを有している。これらのキラルな構造は、分子認識、触媒作用、情報伝達などの生命活動に必須の高度な機能の発現と深く関わっている。つまり、キラルな生体高分子とその超分子によって高選択的で高効率的な生体システムが構築され、生命活動が維持されている。 一方、高分子化学や超分子化学の分野においても、キラリティーの果たす役割の重要性は広く認識されており、生体高分子の機構解明のモデルとなるなどの学術的な興味だけでなく、生体高分子を凌駕する機能を有する機能性材料としての応用を目指して、キラル高分子や超分子に関する研究が世界中で活発に行われている。高付加価値のある新たな高機能性高分子・超分子材料の創製は、化学だけでなく電気・電子、医療などの広範囲の産業技術の発展にもつながると期待される。特に、資源の乏しい我が国においては、次世代の化学産業の中核を担い得るような新規な機能性マテリアルの開発は極めて重要な課題であると考えられる。 近年の有機合成や高分子合成技術の飛躍的な進歩もあいまって、これまでに多種多様な構造のキラル高分子や超分子が設計・合成され、走査型プローブ顕微鏡をはじめとする分析技術の格段の進歩によって、溶液中や固体状態におけるキラル高分子やキラル超分子の詳細な構造が明らかになりつつある。また、それらのキラル分離能、不斉触媒能、非線形光学機能などが調べられ、応用面での機能開拓も行われており、中には実用化されているものもある。しかし、生体高分子を凌駕する機能を有する機能性材料の開発を実現するには、キラル高分子・超分子のより効率的な合成法・ 構造制御法についてのブレークスルーが必要であるだけでなく、キラル構造と機能・物性との相関の理解などの課題が数多く残されている。 本特定テーマでは、「キラル高分子」「キラル超分子」をキーワードにし、キラル構造を有するあらゆる高分子、超分子に関する研究に興味をもつ研究者が一堂に会して、合成、反応、構造、物性、理論、機能、応用などの様々な観点から総合的な討論を行うことを通じて、この分野の大きなブレークスルーにつながることを期待しています。 是非、この分野で活発な研究を展開されている貴方に、次のような特定テーマ分野で研究成果を発表し、討論に参加していただきますようお願い申し上げます。 |
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