S21.バイオマスポリマー創成の最前線
(理化学研究所 環境資源科学研究センター)阿部 英喜
<趣旨>
  現在、資源循環型社会の構築の必要性が強く認識されるなか、高分子材料分野においても、再生可能なバイオマス資源を原料とするバイオマス由来プラスチックの研究開発への期待が益々高まっています。バイオマス由来原料から生産されるポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸、修飾セルロースなど、数多くの種類の素材が開発されるとともに、バイオリファイナリー技術に基づくバイオポリエチレンやバイオPETなど石油由来ポリマーの原料代替技術開発が進み、バイオマスポリマー材料の普及は着実に前進しています。しかし、バイオマスポリマー材料の普及をさらに加速させるためには、バイオマスポリマーだからこそ発現できる優れた性能あるいは特異な機能を有する材料の創成が必要とされています。
  単にバイオマス由来原料を利用したポリマー素材の合成というだけではなく、汎用高分子の枠を超えた性能や機能を付与した新たなポリマー素材をバイオマス由来原料から創出する技術は、次世代型バイオマスポリマーの分子デザインを提案する重要な課題であります。バイオリファイナリー技術によってつくり出された新たなバイオマスモノマーの高度利用、バイオマスモノマーを自在に操って合目的な性能を付与するバイオマスポリマー合成技術など、新たな発想に基づく分子デザイン手法の開発もその一つです。一方、既存のバイオマスポリマー素材のもつポテンシャルを最大限に引き出し材料として利用できる加工技術、複合材料化によってはじめて引き出すことのできる性能・機能など、バイオマスポリマー素材の高度材料化技術は、バイオマスポリマー材料の普及を飛躍的に進展するために必要不可欠であります。また、バイオマスポリマー素材ならびにバイオマスモノマーの生産効率を高めるための生物工学的あるいは化学的技術、バイオベースでは実現されていない既知高分子のバイオマス生産などの技術開発とともに、生分解という機能を活かしたバイオマスポリマーの利用技術の展開など、今後バイオマスポリマーに要求される環境低負荷技術の一つと考えられます。
  本特定テーマでは、上述の技術課題に関して集中的に議論を行うことで、バイオマスポリマー開発の現状と将来展望を活発に討論したいと考えています。是非、この分野で活発な研究を展開されている貴方に、次のような特定テーマ分野で研究成果を発表し、討論に参加していただきますようお願いし申し上げます。
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