S11.「柔らかな」生体および合成高分子系の解明と構築 |
(東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所)吉沢 道人
(物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点)中西 尚志 |
<趣旨> 生体および合成高分子に見られる特有な機能を発現する複雑分子系の本質は、内部自由度が大きく、系が必要に応じて構造を柔軟に変化できる点にある。例えば、ある特定ユニットのコンフォメーションのわずかな違いに応じて、その高分子の持つ機能や物性が驚異的に変化する系などがある。この現象は同程度のエネルギーを持つ複数の準安定状態が存在することを意味しており、環境変化や外部刺激によってよりエネルギー準位の低い安定状態に収束できる。このような複雑系の自由さ、すなわち「柔らかさ」の解明と構築は、高分子ならびに超分子化学を含む幅広い研究分野に共通する極めて重要な課題であるが、その理解はほとんど未解決な状況である。「柔らかさ」の研究は、複雑な現象をどのように理論的に理解・解明し、制御すると共に、新しい複雑分子系をどのように構築するかであり、広い時間と空間スケールの視野を持ち、解析(理論化学)と計測(分析化学)と創成(合成化学)を専門とするそれぞれの研究者が協奏的に共同で挑戦する課題である。 このような背景の下、本特定テーマでは柔らかな構造と機能を合わせ持つ生体系(例:光応答性タンパク質の機能解析・制御ならびに新機能創成)および合成高分子系(例:主鎖および側鎖に種々の官能基を自在導入した機能性ポリマー)、さらには超分子系(例:準安定状態を意図的に設計・制御した分子組織系)まで含む複雑分子系に着目し、「解析」と「計測」と「創成」の3つのアプローチによる最新の研究知識と技術を共有し、その解決とさらには新たな学術領域の構築ならびに新奇高分子系材料の創成に向けた活発な討論するための場を提供する。 |
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