| S8.高分子材料開発のための計算科学最前線 |
| (日本ゼオン株式会社)本田 隆 |
| <趣旨> 高分子の研究には、時間スケール的には瞬時に終了する化学反応から長時間に及ぶクリープ現象まで、また、それに伴い長さスケール的は、原子・電子の世界から構造体として認識できる大規模成型品まで、広範囲なスケールにおける様々な実験・理論・シミュレーション等の解析手法が必要である。しかし、スケールが異なれば取得できる情報量に差があるものではなく、各手法が個々のスケールにて大量のデータを発生するものである。よって、機能的に優れた高分子材料を開発するためには、常に優良なデータを効率よく取得・解析・整理することが求められてきた。 高分子計算機科学はこのようなデータ・マネージメントのニーズと共に発展してきた。量子化学計算においては、新たな理論の開発・実装により、精度の向上と情報量の拡充が図られている。また、分子力場を用いた全原子分子シミュレーションでは、実験的に観察することが難しい、分子の構造や動きをもって、現象の解析をすることができるようになってきた。粗視化分子動力学やレオロジーシミュレーションにおいては、高分子鎖の絡み合いをモデリングし、高分子材料の緩和現象の理解に非常に貢献している。さらにスケールを大きくすれば、SCF計算や平均場計算により相分離現象を扱うことができ、その出力を連続場計算に与えれば、FEM計算にまで発展させることができる。また、各スケールの手法を複合的に合わせれば解析が難しかったフィラーを充填した複合材料のシミュレーションも行えるようになってきた。 計算機科学の発展にはハードウエアの発展に後押しされるところもある。昨今のMPI並列によるスパコン環境の拡充やGPGPU等を用いたデバイスによる計算の高速化、また、その利用によるディープ・ラーニングによるデータ認識・処理の飛躍的な発展は刮目に値する。これまでの高分子材料開発により得られたデータがさらなる飛躍の土台となることも、昨今の情報技術開発により可能であるかもしれない。 本特定テーマでは、計算科学を「新規手法・大規模計算・機械学習」研究のフィールドとしてとらえ、幅の広い研究成果の情報交換と討論をする場を提供したい。計算精度・計算手法・インフォマティックス等、多様な内容を討論することにより新たな発想が生み出されることを望みたい。この分野での先駆的な研究者の皆様、また、新たな材料開発の手法・手段を模索している研究者の皆様、次のような特定テーマ分野で研究成果を発表し、討論に参加し、高分子材料の開発の発展に寄与して頂けますようお願い申し上げます。 |
| 閉じる |