第31回ポリマー材料フォーラム優秀発表賞選考報告

31PMF 運営委員 植草 貴行

 2022年のポリマー材料フォーラムは、11月15日、11月16日の2日間にわたり開催されました。オンライン開催、会場開催の両面を想定して準備を続けていましたが、COVID-19の感染者数を元に運営委員会で再三協議した結果、3年振りの会場開催に踏み切りました。発表申し込み時点の6月は、オンライン、会場いずれの開催方式もあり得る中でしたが、195件の発表があり、盛況に終えることができました。本誌面をお借りして発表者、参加者の方々に厚く感謝申し上げます。会期中は各発表に対して数多くの方に聴講頂き、また感染リスクに配慮したためか昼の休憩時間にも聴講者が途切れずに、活発な議論が各所で繰り広げているのを目にすることができました。
 当日はテーマごとの4セッション(Aセッション:ライフサイエンス・環境材料、Bセッション:電気・光・情報・エネルギー関連材料、Cセッション:高性能・高機能材料、Dセッション:ポリマー材料の設計・合成・加工・解析)に分かれて発表頂きました。セッションごとに、下記の基準および方法により、16件の優秀発表賞(ポスター賞)を選出しました。
[審査対象] 全発表のうち、先行希望のあった146件のポスター発表を対象とする。
[審査員] セッションごとに、運営委員で構成された審査員からなる審査団を結成して審査を行う。
[選考基準] ①発表内容:新しい材料および技j通としての可能性を見出した、あるいは予見させる高分子材料および関連技術である。②プレゼンテーション:質疑に対して適切な応答、ディスカッションが出来る。③ポスターの論理性・ビジュアル性:一見して発表の内容が理解できるような構成、ならびに人を引き付ける特徴的・魅力的なポスターである。
[審査方法] 上記基準に基づき、1つのポスター発表に対して各担当セッションの複数名の審査員が発表を聴講し、質疑応答を通じて採点することで優秀発表を選定し、点数化して審査団長に報告する。
[審査経緯] ポスター発表終了後、まず、セッションごとに採点結果を集計し、審査団で議論して受賞候補者を選定した。次に、ポリマー材料フォーラム運営委員長、副運営委員長、各セッション審査団長からなる優秀発表選考委員会にて、それぞれのセッションから提出された候補者を厳正に審議し、受賞者を選定した。
 今回の発表全体を通じて、近年の発表同様に社会課題の解決を意識した発表、企業とアカデミア(大学、研究機関等)の共同発表が多かったように感じました。本フォーラムは、高分子学会が主催する他の行事(年次大会、討論会)と比較して、企業からの発表が多いことが特徴になります。企業の方が発表しやすいように、発表申し込み段階でも、【材料に関しては通常の研究発表と同様開示されることが望ましいが、詳細な材料の表記は必須としません。ただし、技術内容の議論ができる内容を表記してください】という旨を表記しております。今回も、開発初期段階で発表頂いた内容もあろうかと見受けられますが、質疑応答でも聴講者から、産学それぞれの立場からの複数の視点の発言がなされており、発表者、参加者双方にとって刺激的な時間になったと思います。
 最後に、優秀発表として受賞された皆様には心よりお祝い申し上げます。発表者、参加者、また出展頂いた企業の皆様、研究室の皆様、年次大会・討論会の受賞者の皆様に、重ねて心からお礼申し上げます。また、開催にあたって大変なご尽力を頂いた運営スタ風の皆様、審査団員の皆様に感謝いたします。感染対策に配慮しながらの会場開催という事もあり、まだまだ改善の余地はあると思います。ご意見、ご要望等がございましたら、高分子学会事務局までお知らせください。今後の『激動する社会』の中では、ポリマー材料フォーラムも、オンライン開催、会場開催、ハイブリッド開催等と毎年『変革』していくことが予想されます。どのような開催方式となっても継続して、産学官連携を加速していくことを支えることになるのを期待し、第31回ポリマー材料フォーラムポスター賞選考報告と致します。

優秀発表賞受賞者

【Aセッション】
フランジカルボン酸系バイオマスポリエステルの開発と応用
(三菱ケミカル)田中  俊資
 
公開文献データを活用したケミカルズ・インフォマティクス(CI)ツールで探索したバイオ由来ポリ 乳酸樹脂用添加剤の効果実証
(日立製作所)坪内  繁貴
 
エレクトロスピニング法を用いたペンギンの羽根を模倣した耐水素材の作製 
(名工大院工)川崎  涼介
 
高性能逆浸透膜の開発 
(東レ)三井  伸也
 

【Bセッション】
トロパンアルカロイドの高選択的検出を指向した分子鋳型ポリマー修飾型高分子トランジスタセンサの開発
(東大生研)佐々木 由比
 
イオン伝導性と力学特性を両立した共重合脂肪族ポリカーボネート型高分子電解質の開発 
(帝人/農工大院BASE)石井  修人
 

【Cセッション】
ゲル微粒子を積層化したコロイドゲルブロックの構築と粘着性の制御
(慶應大院理工)井野  翔太
 
ポリマーブラシ界面の動的濡れ及び流体挙動の可視化とその理解
(京大化研/日本ペイント・サーフケミカルズ(株))玉本   健
 
スーパーエンジニアリングプラスチックの改質を目的とした高耐熱樹脂相溶化剤の開発
(帝人)添田  淳史
 
複合紡糸技術"NANODESIGN"による高機能テキスタイルの開発
(東レ)増田  正人
 
ポリエチレンアミンとポリエチレングリコールジアクリレートとのマイケル付加反応で合成した多孔質高分子のクリスチャンセンフィルター効果による発色
(芝浦工大院理工)中井 梨紗子
 

【Dセッション】
ホスト分子修飾ポリジメチルシロキサン材料の力学特性評価
(阪大院理)吉田  大地
 
成形性と耐熱性に優れた熱可塑性ポリイミド「サープリム」の開発
(三菱ガス化学)酒井  敦史
 
新規β晶核剤によるポリプロピレンの高性能化
(ADEKA)正井  省吾
 
Hansen溶解度パラメータを用いた樹脂中におけるフィラー分散性の検討
(富士電機)保坂  伊吹
 


 

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