第30回ポリマー材料フォーラムポスター賞選考報告

30PMF 運営委員 鈴木一充

 2021 年のポリマー材料フォーラムは、11月10日、11日の2日間にわたり開催されました。今回もCOVID-19の感染リスクを考慮してオンラインの開催にはなりましたが、その中で133件の発表があり、盛況に終えることができました。ご参加いただいた皆様には、この場をお借りして感謝申し上げます。今年は、昨年の結果を参考にしながら運営委員会で議論を重ね、最終的にポスターセッションの発表形式はそのままに、発表時間枠内の参加者数の制限を緩和する目的で、WebExのブレイクアウトセッション機能を活用しました。その甲斐があってか、各発表に数十~百名近い数多くの参加者にお集まりいただき活発な議論が繰り広げられたものと感じております。
 当日は、テーマごとの4セッション(Aセッション:ライフサイエンス・環境材料、Bセッション:電気・光・情報・エネルギー関連材料、Cセッション:高性能・高機能材料、Dセッション:ポリマー材料の設計・合成・加工・解析)に分かれて発表いただきました。セッションごとに、以下の基準および方法により12件の優秀発表賞(ポスター賞)を選出しました。
[審査対象]全発表のうち、審査希望のあった106 件のポスター発表者を対象とする
[審査員]セッションごとに、運営委員で構成された審査員からなる審査団を結成して審査する
[審査基準]①発表内容:新しい材料および技術としての可能性を見いだした、あるいは予見させる高分子材料および関連技術である。②プレゼンテーション:質疑に対して適切な応答、ディスカッションができる。③ポスターの論理性・ビジュアル性:一見して発表の内容を理解できるような構成、ならびに人を引きつける特徴的・魅力的なポスターである
[審査方法]上記基準に基づき、複数名の審査員が各担当セッションの発表を聴講し、質疑応答を通じて採点することで候補者を選考する
[審査経緯]ポスター発表終了後、まず、セッションごとに採点結果を集計し、審査団で議論して受賞候補者を選定しました。次に、ポリマー材料フォーラム運営委員長、副運営委員長、各セッション審査団長からなる優秀発表選考委員会にて、それぞれのセッションから提出された候補者を厳正に審議し、受賞者を決定しました。
 今回は、発表全体を通して社会課題の解決を明確に意識した発表が多かったように感じました。本フォーラムは、高分子学会が主催するほかの三大行事と比べて、企業からの発表が比較的多いことに特徴がありますが、改めて各発表の質疑応答に耳を傾けますと、産学それぞれの異なる視点からの発言は、発表者、参加者双方にとってとても刺激になったと思います。企業の立場からすると、普段お付き合いのない先生方から客観的なご助言がいただける貴重な機会になると思いました。ポリマー材料フォーラムという交流の場が、組織や人のネットワークの懸け橋としていっそう機能する可能性を感じるとともに、より積極的にこの場を活用していく必要性を感じました。今後企業の発表件数がますます増え、知の交流が活発になり、他流試合を通じてさまざまなイノベーションが生まれることで、高分子産業のさらなる発展に繋がることを祈念します
 最後に、優秀発表として受賞された皆様には心よりお祝いを申し上げます。オンライン開催の中のポスターセッションという難しい発表条件でもありましたが、このような状況の中で、本フォーラムを盛り上げていただいた発表者、参加者、また、出展いただいた企業の皆様、研究室の皆様、年次大会・討論会の受賞者の皆様に、重ねて心からお礼申し上げます。また、開催にあたり大変なご尽力をいただいた運営スタッフの皆様、審査団員の皆様に感謝いたします。オンライン開催が常態化しつつある昨今ではありますが、まだまだ改善の余地はあると思います。ご意見、ご要望等がありましたら、高分子学会事務局までお知らせください。今後対面でのコミュニケーションに戻り、このポリマー材料フォーラムが、産官学連携の加速のためにより機能した「場」になることを期待し、第30回ポリマー材料フォーラムポスター賞選考報告といたします。

ポスター賞受賞者

【Aセッション】
天然リグニン由来の生物親和性を示す新規化合物の設計と合成
(県立広島大院)松本 晏奈
 
熱応答性ポリペプトイド-糖鎖高分子ベシクル:物質の膜透過特性 
(京大院工)奥野 陽太
 
高靱性バイオマス材料の開発を目指したアルギン酸ナトリウムとヒドロキシアパタイトの複合化 
(同志社大院理工)奥田 結衣
 

【Bセッション】
5G対応低伝送損失基板用ポリイミド樹脂
(荒川化学工業)山口 貴史
 
含硫黄ポリマー活物質の適用による次世代リチウム‐硫黄二次電池の長寿命・高エネルギー密度化 
(ADEKA)撹上 健二
 

【Cセッション】
セルロースナノファイバー強化ポリアミド6樹脂の開発
(ユニチカ)連  康一
 
構造変化によって分子結合能を制御できる動的分子認識ゲルの設計
(関西大化学生命工)豊島 有人
 
サステナブル水系コーティング剤を用いた防汚表面改質技術の開発
(花王)長谷川 嘉則
 
撹拌法によるシリンダー状粒子への変形メカニズム
(神戸大院工)竹村 孝太
 
ポリエチレングリコール・シクロデキストリンを主成分とするポリロタキサンの海水中生分解挙動
(東大院新領域)安藤 翔太
 

【Dセッション】
軽量遮音材として実用設計された音響メタマテリアルシート
(三菱ケミカル)中山 真成
 
パラフィンの相転移を利用したゲル状蓄熱樹脂の創製
(三菱ケミカル)鈴木 星冴
 


 

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