第29回ポリマー材料フォーラム

第29回ポリマー材料フォーラム（29PMF）報告

29PMF　運営委員長　東直樹

　第29回ポリマー材料フォーラムが11月26、27日の2日間にわたり、Webexによるオンラインで開催されました。
　今回のPMFは、2020年は前年に吉野彰博士がノーベル化学賞を受賞され、東京ではオリンピック、パラリンピックが開催されるとあって、ますます日本が注目される年での開催で、産官学が一堂に会して、日本の科学技術を披露できる場と考えておりましたが、爆発的に拡大を見せたCOVID-19（コロナ）の影響を受け、当初計画していたタワーホール船橋から、オンラインの開催へと苦渋の末、変更を決定しました。
　当初は、緊急事態宣言が発生され、研究者が在宅勤務と実験・研究もできない、学生は休講という事態であり、成果を発表すべき場に肝心となる研究成果が出ていないのでは、と開催を中止することも頭をよぎりました。しかしながら、運営委員の多くの方より、「研究は今年だけではなく、何年もかけて行っており、研究成果を発表することは可能」というご意見をいただき、今回の主題も「逆境の中、今こそポリマー研究の団結力！」という、ここに参加する、逆境の中、研究を行う研究者並びにその研究をフォーカスした主題といたしました。
　準備・運営は従来通り四つのセッションに分かれてセッションオーガナイザーを中心に行われました。ポスター発表としてAセッション「ライフサイエンス・環境材料」31件、Ｂセッション「電気・光・情報・エネルギー関連材料」26件、Cセッション「高性能・高機能材料」45件、Dセッション「ポリマー材料の設計・合成・加工・解析」54件の合計156件のポスター発表が行われました。また、講演としては、一部他の学協会と連携し、各セッション8件ずつ、計32件の招待講演を行いました。今年も産官学それぞれから、講演をいただくよう選定しました。講演者も受講者の反応が読み取れない中、最先端の材料・技術に関する興味深い発表と質疑が行なわれました。
　ポスター発表は、従来のポスター1枚での発表ではなく、パワーポイントを用いたプレゼン発表でありましたため、多くのポスター賞選考委員から、「ポスター発表を審査しているというより、オーラル発表を審査している感じだった」という声もありましたが、ポスター発表の中から厳正な審査の結果、合計14件の優秀ポスター賞が選出されました。今回の優秀ポスター賞受賞「高分子」本号にて発表される他、楯が授与されます。審査の詳細については審査委員長からの報告をご参照いただければと思います。
　以上の通常発表に加えて、近年のポリマー材料フォーラムでも行ってきた、特別企画も2日間にわたり実施いたしました。企業がどのような研究開発を行っているかを紹介する学生向けのキャリアブース5件及び、大学研究室の研究内容を紹介する研究紹介ブース11件です。各1時間のオンライン会議室をスケジュール化し、自由に出入りし、参加者から、要望に応じて、説明や質疑を行う形式をとり、そこでは活発な交流がなされていました。また、企業の機器展示9件及び過去の年次大会、討論会受賞ポスター28件については、動画、ポスターをPMFの参加者用ホームページに添付することで、参加者が自由な時間に視聴可能な方法で行っていただきました。
　例年、技術者との交流が可能でした、イブニングフォーラムは、オンライン開催ということで、開催が出来ず、イブニングフォーラムを楽しみにしていました参加者の方々には、大変申し訳ありませんでした。先述のポスター発表も、オンライン会場と監視人数が限られていることもあり、コメンテーターが聴講する10分のプレゼンテーションの時間とそれとは別に、参加者が聞くことができる30分のプレゼンテーションの時間を設ける等、初めてのオンライン開催でも参加者が「満足できる」フォーラムを提供することを努めてまいりました。
　本フォーラムの参加者数は、577名と会場開催に比べると参加者数は少ないですが、オンラインが所属的に使用不可能で、参加できないと断りのご連絡や、過去の会場開催の段取りとは全く異なり、参加を見送られた方もいると思いますが、まずは、無事開催できたことが、今後もオンライン開催の可能性を考えていくうえで大きな一歩になったと思っております。これも、講演・発表を行っていただいた諸先生、ポスター発表者及び参加者の皆様、スポンサー企業の皆様に心から御礼申し上げます。そして一から運用仕様を作り上げました、高分子学会事務局並びに運営委員の皆様ご苦労様でした。
　来年度は関西支部の担当による開催となります。コロナ禍はまだ収束しておりませんが、立ち止まることなく、引き続き、産官学のポリマー材料の情報発信、情報交換、交流の場として皆様、ご参加・ご活用いただければ幸いです。